「キャリア原書輪読会」「ずっと金の糸」募集中です! 詳細

Appreciative Inquiry(5)

目次

第4章 実践における4-Dサイクル(The 4-D Cycle in Action)(前半)

 「Discovery(発見)、Dream(夢)、Design(設計)、Destiny(実現)」について、さらに詳しく説明するとともに、AIプロセスがある組織の中でどのように実施されたのか、その具体例も紹介します。

The First D, Discovery(発見)

  1.  「Discovery(発見)」プロセスの核心は、組織や成員の持っている肯定的な能力を明らかにすることにあります。
  2.  そのプロセスの中心は、「アプリシェイティブ・インタビュー(Appreciative Interview)」です。

 インタビューでは、「何人くらいにすればよいのか?」「誰が担当すればよいのか?」と尋ねられることがあります

 私たちは最近では、「全員です」と答えることが増えてきました。
なぜなら、そのプロセスを通して、人々は、

  1. 他者や組織の良さを認め
  2. 驚きや新鮮な発見を行い
  3. 感動やインスピレーションを受け
  4. その良さを正当に評価する

 これにより、本来のこうした力を取り戻します。このインタビューの独自性と強い力は、その根本にある「肯定的(アファマティブ)な視点」に由来します。すべての問いポジティブなものであるという点です。(問題探しではなく、“良さ”や“可能性”に光を当てる姿勢)
 インタビューを通じて、組織やコミュニティが最高の状態にあるときに何がそこに活力を与えているのかを明らかにしていきます。
 そこでは、

  1. 個人や組織にとっての「最高の瞬間(ハイポイント)」や大切にしている価値観を見出し、どのように高めていきたいかという希望や願いを共有するのです。
  2. この段階で、全体の人々が互いにつながり、自分たちが最高の状態にある事例を検討し、組織の「ポジティブコア」を分析・可視化し、成功の根本的な要因を見出します。 このつながりを通じて関係性が築かれ、組織の知恵が広がり、希望が育まれていきます。

 AIは、組織全体でこうした探求の精神に火をつけるための実践的な手法を提供しています。

「Leadshare」の例

 カナダの大手会計事務所「Leadshare」では、退任する伝説的なマネージング・パートナーの後継者選定にAIが活用されました。400名に及ぶ全パートナーを巻き込んで、「形だけではない、生きた遺産」を残そうと考えたのです。
 対象となった400名全員への綿密なインタビューが実施され、その聞き手は、30名の次世代のジュニア・パートナーが務めました。これにより、世代を超えた力強い絆が生まれ、対話を通じて組織の歴史が生き生きと蘇りました。
 自社の歴史を新たな視点で捉え直し、「肯定的な可能性の源泉」として深く理解し、無限の解釈を生み出す優れた詩のように受け止められるようになりました。  
 このパートナー会議では、収集された内容が共有され、未来の展望と結びつけられました。ある参加者は、「この戦略策定プロセスは、パートナーたちの記憶に残る最高のものの一つとなった」と語っています。

ゴロワーズ

 本例の内容は、Handbook for Strategic HR, 2012, p.543やThe Organization Network 2015にA case study of LeadShareとして掲載されています。

著者のMary Ann Raineyさんは、Leadshareが後継者育成において、独自の成果を上げた最大の要因は、

従来の「偉人(ヒーロー)」型のアプローチから、「集団性や協働を重視する」アプローチへの転換
一つのファームである」という一体感が醸成され、自分たちが非常に価値ある存在であるという感覚

と語っています。このMary Ann Raineyさんは、ゲシュタルト組織開発を推進されている方です。ゲシュタルト組織開発に関しては、南山大学の人間関係研究センター紀要「人間関係研究」第11号に中村和彦さんの概説があります。

 ゲシュタルト組織開発とは、「ゲシュタルトODの中心は『気づき(awareness)』である。組織の構成員が、自らの組織内の諸機能やプロセスに気づくことが、それらの改善に向けて行動する力を高めると想定されている。(図3)」と説明しています。このゲシュタルト相互作用サイクルのエネルギーの観点で、グループのメンバーが調和した場合と調和してない場合を図4-1,2に表しています。この「集団性や協働を重視する」アプローチが、ゲシュタルトODで言う所のグループのメンバーの調和を生み出し、その結果が「一つのファームである」という一体感を醸成されるにつながると理解しました。

From Discovery to Dream(夢) 発見から夢へ

 芸術家の想像力は、絵の欠点探しによってではなく、価値あるものに触発されることで呼び覚まされる。価値を見出すまなざしは、私たちの目を生命へと向け、感情を揺り動かし、好奇心を呼び覚まし、未来を思い描く力を刺激する。

 Ludemaらによると、「AIの夢(Dream)の目標は、価値ある重要な未来を構想するためにシステム全体を巻き込むことです。これは、人々が視野を広げ、想像力を働かせ、組織がその強みと願望一致した場合、どうなるかを話し合うための招待状です。」
 夢(Dream)の段階では、インタビューで得られた話や洞察が建設的に活用されます。ポジティブなコアに関する話、分析、マップは、AIのビジョン策定段階にとって不可欠なリソースとなります。

Hunter Douglasの例

 Hunter Douglas WFDでは、「ポジティブ・コア」をマッピングした後、「このポジティブ・コアのマップは、我々の事業の将来にとってどのような意味を持つのか?」という問いから「我々の強みは、ずっとそう思い込んできた『窓』にあるのではなく、『技術』にあるのです。その技術を新たな分野に応用すれば、新製品や新規事業を創出できるはずです」。
 そして、彼らはまさにそれを実行に移し、5年以内に窓関連以外の新製品を開発することが盛り込まれました。彼らは見事な成果を上げ、わずか3年で新製品(天井用タイル)の設計と試作を完了させるとともに、新たな市場への進出を成功させる事業部門を立ち上げたのです。

夢(Dream)の段階」では、組織が最高の状態にある瞬間耳を傾け、組織として共有する未来に対する希望や夢のイメージを共有することが求められます。未来の可能性は、言葉として語られ、実践として試みられることで、しだいに生命を帯びていきます。

この例に関しては、AI Practitioner のSpring 2017 Volume 19 Number 2に報告されていました。そこで、著者のアマンダ・トロステン=ブルームさんは、社内でのプロジェクトの主導役を務める一方で、「シャドウ・コンサルティング」としてダイアナ・ホイットニーとデビッド・クーパーライダーの協力を受けたそうです。

その中で、AIを活用した設計に関する重要な学びとして、

「ポジティブ・コア(肯定的核心)」に関する広範な探求は、ポジティブな要素を喚起し、育むものである。
――トロステン=ブルーム&ホイットニー
 AIを活用した変革に尽力しつつ、もともとは「欠点や不足の解消」を主眼とする変革環境向けに考案されたツールも、うまく活用することも可能だ、ということです。何も、有益なものまで一緒くたに捨ててしまう必要はないのです。むしろ必要なのは、こうしたツールや手法の活用法を見直し、そこから得られた知見を語るための新たな方法を見出すことです。

Reality is co-constructed through dialogue and relationship. Kenneth Gergen
現実は、対話と関係性を通じて共同構築される。――ケネス・ガーゲン
 少数の専門家による分析や助言ではなく、多くの人々による対話と関係性こそが、組織の方向性の変革を生み出し、それを維持していくための主要な原動力となるのです。

を挙げていました。

Nutrimental Foodsの例

 ブラジルのニュートリメンタル・フーズ社は、工場を丸一日操業停止して、全従業員700名が一堂に会し、同社が高品質な健康食品の生産者として、最も活気に満ち、大きな成功を収めていた時に、その組織に命を吹き込んでいた要因や力について探求しました。
 その後、温かい声援と期待に送られ、あらゆる階層の従業員、サプライヤー、販売代理店、地域社会のリーダー、金融関係者、顧客といった150名のステークホルダーからなるグループが、「夢(Deam)」を具体的に描き出すための4日間の戦略セッションへと臨みました。

 「世界は私たちに何になることを求めているのでしょうか?私たちがどれだけ変わっても、新しく異なる未来の中で続けたいと思う私たちらしいものは何でしょうか?今夜、私たち全員が眠っている間に奇跡が起こり、ニュートリメンタル・フーズが私たちが望む通りになったと仮定しましょう――そのすべての長所が増幅され、延長され、倍増して……。私たちは目を覚まし、いま2005年です……。今日ニュートリメンタル・フーズに来ると、何が違って見えますか、そしてそれをどうやって知ることができますか?」

 4日間にわたる分析と計画策定、戦略的事業方針の三つの明確化を経て、組織は集中力、連帯感、自信をもって未来に踏み出しました。その6ヶ月後には、数百万ドルという記録的な最終利益を達成し、利益は200パーセント増加しました。
 この劇的な成果の要因を2つ挙げています。システム全体を計画プロセスに取り込むことで、

  1. 組織が実際には「人間関係の中心」であり、感謝の目でお互いの最善を見つめ夢や究極の関心事肯定的な方法で対話できる
  2. さらに完全な声でつながることで、新しい世界だけでなくより良い世界を創造できる場所であることを理解する

 それ以来、ブラジル全土でアプリシエイティブ・リーダーシップ能力を育成する革新的なリーダーシップ研究所の設立のためのプロセスとして、毎年アプリシエイティブ・インクワイアリを活用しています。

ゴロワーズ

Strategic Employee CommunicationのFirst Online: 07 October 2018に”Leadership Communications with an Appreciative Approach in a Participative Culture: The Case of Nutrimental”で取り上げられているようです。まだこちらは読んでいません。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

目次