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Appreciative Inquiry(6)

目次

第4章 実践における4-Dサイクル(The 4-D Cycle in Action)(後半)

Design(設計) for Organizing into the Future

 「夢(Dream)」において、より良い世界のビジョン、力強い目的意識、あるいは人々を惹きつける戦略的意図が語られると、次に焦点は「理想的な組織」を創り上げることへと移っていきます。
 著者たちは、これまでに“偉大な夢”に触発されながら、新しく必要な「設計(Design)」をしようとしない組織を見たことがないと述べています。 つまり、

人々が心から共感できる未来像を持つとき、組織は自然に「今のままでは足りない」「未来にふさわしい新しい形を生み出さなければならない」と感じ始めます

セーブ・ザ・チルドレン(Save the Children)

ジンバブエで「セーブ・ザ・チルドレン(Save the Children)」のパートナー組織と共に活動した経験を紹介する。
その組織が共有し未来像である夢(Dream)は、とてもシンプルでした。

「5年以内に、ジンバブエのすべての人が清潔な水にアクセスできるようにする」

 この夢(Dream)はシンプルではあありますが、その実現には、従来の組織のあり方を大きく変える必要がありました。つまり、従来型の「階層的な組織(ヒエラルキー)」では対応できず、代わりに、「アライアンス」や「パートナーシップ」のネットワークによって動く、新しい組織形態へと「設計(Design)」を変える必要が生まれたのです。

 ここで重要なのは、「夢(Dream)」が先にあり、その夢(Dream)に合わせて「組織設計(Design)」が変化していったという点です。

 重要な点は「未来像(夢)」が、組織の“ポジティブな過去”に基づいて生まれてくるというところです。単なる理想論や空想的ビジョンを描くのではありません。組織の中で実際に起きた成功体験や、「うまくいっていた瞬間」の具体例(いわゆるGood News Stories)を土台にして未来を構想する。つまり、
「すでに存在している最良のもの」と、「これから実現したい未来」を橋渡しする形で、
「可能性の提案(Possibility Propositions)」を作り上げていきます。

 さらに設計(Design)の段階では、単にデータ分析をすることではなく、データを超えて想像し、「もし本当に理想を最大化するとしたら、どんな組織になるのか?」を考えることです。

その核心にある問いが、次の一文です。

「もし私たちの組織が、“ポジティブ・コア”の特質を最大限に引き出し、そして私たちの夢をできるだけ速く実現するために、あらゆる面で理想的に設計されるとしたら、どのような姿になるでしょうか?」

この問いが、AIの設計(Design)の核心を表しています。

 つまりAIにおける組織デザインとは、「問題を修正すること」ではなく、「強みと夢を最大化するための組織を創造すること」なのです。

 DIA Corporation

 次は、消費財販売会社である DIA Corporation において作成された、約20項目に及ぶ組織設計に関する声明の一つ「可能性命題(possibility proposition)」を紹介します。これが書かれた当時、この命題は革新的なものでした。今日では、それはその企業における日常的な業務の進め方となりました。

  • DIAは、アイデアの相互交流を促進し、縄張り意識による組織の肥大化を最小限に抑え、グループ協働による相乗効果を活かし、優れた一つの企業の大切な一員であることへの誇りを育む学習する組織です。
  • DIAは、毎年開催される戦略計画会議を通じて、その学習を加速させています。この会議には、社内の500名全員に加えて、主要なパートナーや利害関係者も参加します。
  • 戦略的な学習の場として、各チームは、同業界で優れた組織とみなされる他社について行ったベンチマーキング調査の結果を発表します。別のチームは、DIAに対する年次のアプリシエイティブ(強みに着目した)分析を発表します。
  • こうした成功事例のデータベース(社内外の双方)が一体となって、DIAの将来の戦略計画の土台を築いていくのです。

  このアプリシエイティブな組織を創造するためのAIプロセスは、「既存組織の変革」にも「アプリシエイティブな組織の創造」にも生かされます。

4-Dサイクル既存組織の変革アプリシエイティブな組織の創造
Discovery
(発見)
・ポジティブ・コア(組織の強みの核)を探求する
・競争優位のために強みを整合させる
・有効性と効率性を高めるためにベストプラクティスを共有する
・新しい組織を創造する使命と可能性を探求する
・多様な利害関係者の強みを明らかにする
・共同の可能性のために強みを整合させる
Dream
(夢)
・より良い世界のイメージ
・社会に貢献する組織の戦略的ビジョン
・より良い世界のイメージ
・多くの利害関係者を巻き込み、魅力的な共有ビジョンと価値観を創り出す
Design
(設計)
・組織の価値観を明確にする
・挑戦的命題(provocative propositions)と組織原則を作り上げる
・明確な目的と組織原則を作り上げる
・関係性、役割、責任の憲章を作り上げる
Destiny
(実践・実現)
・原則に沿って夢を実現するために行動する・目的、原則、憲章を実践する
・ビジョンと価値観に沿った継続的な組織イノベーションを行う

統一宗教イニシアティブ(URI)

 1995年、国際連合の50周年記念式典において、William E. Swing司教は、世界中の宗教指導者たちに対して、その道徳的責任について問いかけ、「統一宗教(United Religions)」の創設を呼びかけました。
 それは、「宗教の世界において、国民国家に対する国際連合(United Nations)のような役割を果たす組織」を目指すものでした。つまり、国家同士をつなぐ国連のように、異なる宗教同士が対話し、協力し、平和を築くための国際的な組織を構想したのです。

 但し、これまでにも同様の試みが20回以上「失敗」し、その歴史は、100年以上前までさかのぼります。つまり、「宗教同士を一つにつなぐ国際的な組織をつくろう」という構想自体は、決して新しいものではなく、長い間、何度も挑戦されながらも実現できなかったテーマだったのです。

 初期のビジョンにおいて、UR(United Religions)は、「ひとつの宗教」になることを目指していたのではなく、異なる宗教同士を結びつける「橋渡しの組織」(bridge-building organization=対立や違いを越えてつなぐ組織)として構想されていました。それは、国際連合(UN)が「ひとつの国家」ではなく、多くの国家が世界の幸福や平和について対話する場であるのと同じです。つまりURもまた、「世界の幸福や平和について、さまざまな宗教が対話する場」として考えられていたのです。

 アプリシエイティブ・インクワイアリー(AI)チームは、5年間にわたるAIプランニング・プロセス(AI planning=AIを用いた組織づくり・将来構想づくり)を構想し、実際に動かし始めました。

そのプロセスでは、

  • 毎年、Stanford Universityで、世界規模の大規模サミット(large-group global summits=多人数参加型の国際会議)を開催し、さらにその合間に、
  • 各地域に根ざした地域サミット(regional, locally rooted summits=地域ごとの文化や実情に根差した対話の場)を継続的に行っていきました。

 私たちAIチームは、URIスタッフと協力しながら、世界規模での対話プロセスと、多様な関係者による計画づくりを共同で進めていきました。その結果、

  • 組織憲章(charter)
  • 21世紀型の組織デザイン(organizational design=組織の構造や運営のあり方)

 が作り上げられていきました。
 そして2000年、世界憲章(global charter=世界規模の組織としての基本理念・基本規約)が正式に署名され、世界へ向けてウェブ配信されました。その憲章には、URIの目的として、次の内容が掲げられていました。「宗教を超えた日常的で継続的な協力関係を促進し、宗教を動機とした暴力を終わらせ、地球とすべての生きもののために、平和・正義・癒しの文化を創造すること」。つまり、単なる宗教間の“対立回避”ではなく、異なる宗教同士が、日常レベルで継続的に関わり、協力し合う関係を意味しています。

 それから10年を経た今日、ユナイテッド・レリジョンズ・イニシアティブ18という強力な新しいグローバル組織が存在しています。URIの設計は、他のアプレシエイティブな(強みに着目した)組織と同様、原則に基づいています。

「形態は機能に従う」 という格言ではなく、私たちは「形態は原則に従う」と言います。

 これにより、地域単位の組織は、組織全体の目的と原則を遵守し、それに合致している限り、自らが適切と考えるいかなる方法でも組織化することが可能となります。

Realizing Destiny(運命)

1902年にウィリアム・ジェームズは、

地上のあらゆる生き物の中で、自らの行動様式を変えることができるのは人間だけである。人間だけが、自らの運命を築く建築家なのだ。我々の世代における最大の革命とは、人間は心の持ち方を変えることによって、人生の外面的な側面をも変えうるという発見である……。残念なことに、多くの人々はこの偉大な発見を受け入れ、それを実践しようとはしない。(Quotes of famous peopleより)

 AI研究の初期段階では、Destiny(運命)ではなくDelivery(配達)と呼んでいました。しかし、「デリバリー」という言葉では十分ではありませんでした。GTE、ハンター・ダグラス、ニュートリメンタルなどの企業と共に仕事をして、私たちが発見したのは、AIをすべての人に提供することに集中し、その後一歩引いて変革が自然に現れるのを待つことでした。パッケージ化された製品というよりも、インスピレーションに満ちたムーブメントのように見えます。GTEの組織開発責任者は、これを最前線の草の根からの変革のための組織化と呼びました。

何と呼ばれようと、一度始まればほとんど止められません。(ゴロワーズ:まるで運命のようにですね)

 AlのDestiny(運命)の段階が示すように、大切なのは、日々の探求を組織のポジティブ・コアの特性や要素に向けるだけでなく、人々が互いに支え合い、つながり、協力し、共に創造するための集まるところが、ネットワーク構造になることです。まるで、人々が前向きにポジティブ・コアの力を自分に取り入れ、ネガティブな分析を手放したとき、これまで不可能だと思われていたポジティブな変化が突然、かつ民主的に動員されます。

ゴロワーズ

ロジャーズの必要十分条件が揃うと、人は自ら、そして自然に、建設的な人格変容するのと似ているのは偶然でしょうか?

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