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人格変容に必要にして十分な条件(1)

 ロジャーズ(Carl R. Rogers)の“The Necessary and Sufficient Conditions of Therapeutic Personality Change”(Journal of Consulting Psychology Vol. 21, No. 2, 1957) の輪読会が始まりました。世界中のキャリアカウンセラーの基底と言われるロジャーズカウンセリングの中核三原則「受容・共感・一致」を含む人格変容の必要十分条件の初出論文です。

ここでは、The Conditions条件から復習したのちに“The State of the Client”クライエントの状態を紹介いたします。

目次

The Conditions

 For constructive personality change to occur, it is necessary that these conditions exist and continue over a period of time:
 構造的な性格の変化が起こるためには、これらの条件が存在し、ある一定期間続くことが必要です。
1.  Two persons are in psychological contact. 二人が心理的な接触を持っている。
2.  The first, whom we shall term the client, is in a state of incongruence, being vulnerable or anxious.
 最初に、ここでクライアントと呼ぶ者は、不一致の状態にあり、脆弱であったり不安であったりします。
3.  The second person, whom we shall term the therapist, is congruent or integrated in the relationship.
 二人目の人物、ここではセラピストと呼ぶことにしますが、この人物は関係性の中で自己と一貫して統合されています。(自己一致
4.  The therapist experiences unconditional positive regard for the client.
 セラピストはクライアントに対して無条件の肯定的配慮(受容)を持って接します。
5.  The therapist experiences an empathic understanding of the client’s internal frame of reference and endeavors to communicate this experience to the client.
 セラピストはクライアントの内的な視点を共感的に理解し、その経験をクライアントに伝えようと努めます。
6.  The communication to the client of the therapist’s empathic understanding and unconditional positive regard is to a minimal degree achieved.
 治療者の共感的理解と無条件の肯定的関心がクライアントに、最低限伝えられること。

 このあとロジャーズは、”No other conditions are necessary. ” 「他の条件は必要ありません。」と述べています。

ゴロワーズ

ここに彼の長年の臨床経験で培われた自信と決意が読み取れます。ただただ尊敬です。

A Relationship

 ”The Conditions” で記された六条件の1の二人(セラピストとクライエント)の関係において、心理的接触が存在することです。以降の条件2-6のセラピストとクライエントの各人の状態の前提として、二人がある程度心理的な接触をしており、それぞれが相手の経験的な場面に対するに認知に何らかの違いが生まれることを確かめられるだけです。
 ただし此れは、信頼関係の確立以前に、それぞれが相手の経験的な場面に対するに認知に何らかの違いが生まれたことを確かめられるだけで十分としてます。

The State of the Client

The Conditions” で記された六条件の2のクライエントの状態 “The State of the Client” について考察します。

 心理学の世界ではあまり図式で表わすことは少ないです。そのため、多くのキャリアカウンセリングの説明資料や解説本では、著者の方が想像補う形で下記の様に描いています。

 この論文では、「大学の試験に対して彼自身の自己イメージ(自画像)と能力不足ではないかと言う恐れを持つ自己との不一致から、彼の意識の中で試験の三階へ登る事の身体的恐怖と感ずる」と「良い母であるべきとの自己イメージに対して、一人息子が家出をする度に本当は手放したくないとの思いの不一致から、漠然と具合が悪くなってしまう」の2つのケースを挙げています。これは、不一致による、感情の表出(恐怖)と捉えることが出来ます。

 このロジャーズの2つのケースは、自分自身で抱いている自己イメージ(自画像)と実際との経験に映る自己との不一致と見ることが出来ます。
 先ずある学生のケースでは、試験のある大学の三階に登る恐怖を感じます。これを上の図のように能力不足への恐怖を認めるとすると彼が持つ自己像と矛盾します。しかし下の図のように、この恐怖が理解しがたいもの、例えば高所恐怖であるとすると、不一致が解消されます。


 ある母親のケースでは、息子が家を出る計画を立てるたびにはっきりしない病気になります。良い母であるという自己像と本当は息子にしがみつきたいという欲求を持った母親では不一致が生じます。そこで、下の図のように、漠然とした病気の母であれば、良い母であるという自己像との不一致は解消します。


 上の二例のように、不一致による、感情の表出(恐怖)と捉えることも出来ます。見方を変えると、自己不一致がもたらす「傷つきやすい不安」を解消するために、認知の歪みが利用されている可能性もあります。アンナフロイトの防衛機制で言えば、合理化(不快な現実に対しもっともらしい理屈をつけ、本心を隠して納得しようとする)や補償(自分のある特質に劣等感を抱くとき、別の性質によって補い、バランスをとる)が近いかと思います。

 今回は、経験に映る自己と理想の自己で不一致をとらえました。正確には、実際の経験に映る自己(現実の自己:acual-self)、本人が思う自己(自己認識像:selp picure)、本人が抱く理想の自己(ありたい自分:ideal-slf)の三つがあると思われます。さらに、すべき自己(あるべき姿:out)の場合もあるかと思います。この論文では6条件をシンプルなものにするため、取り上げられていないようです。実際は自己の捉え方は、様々な可能性があると思われます。この辺りは、次のヒギンズで触れたいと思います。

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