ロジャーズ先生を伺い知る

2025年4月24日2025年5月14日

オンラインキャリアらぼのキャリア原書の輪読会では、カール・ロジャーズ先生の「Significant Aspects Of Client-Centered Therapy 」（クライアント中心療法の重要な側面） を現在輪読中です。今お世話になっている養成講座の代表がキャリアカウンセラーで知らない人はもぐりと言うくらい、我々の基本的な姿勢に影響を与えてくれる先人です。

ただ期待して読み始めると、

文章的には、科学論文で目指すべきPlainEnglishから大きく外れて接続詞が多くてどこまで指定しているかわかりずらく、ささに句読点の位置がおかしい、しまいには誤字では？と思われる所もあります。どうやら冒頭に「このグループに話す計画中に、私はいくつか話せるトピックスの取捨選択をしました。」から、輪読会メンバーの見立ては、どこか（臨床医学系）で講演した内容を口述したのものでは？です。

内容的にも我々が養成講座やキャリコンの試験対策で学ぶロジャーズ先生の理論と少し違う説明であることに、最初困惑しました。

特に気になったのが、「臨床的にも統計的にも、治療の展開には予測可能なパターンがあることがわかっています。例えば実習中の大学院生に最初のインタビューの録音した時に、後半のパターンがどうなるかを確信した自分に驚きました。いまや私たちは臨床現場でこの予測可能な特長にあまりに慣れて、当たり前に思っています。」の後の

「治療の実現の条件」（パーソナリティ変化の必要条件）が

①もし「人は基本的に自分自身に責任を負い、自身のために持ち続けようとする」という前提でカウンセラーが接するならば、
②もし「クライアントは強い意志で成熟し、社会に適応し、自立し、生産的で、カウンセラーの力ではなく、自身の力で治癒的変化を目指す」という前提に基づきカウンセラーが対処するならば、
③もしカウンセラーがクライエントの持ちうる態度や感情を自由に引き出せて、たとえそれがどんなに型破りで、ばかげて、矛盾していても、それを温かく受け止める雰囲気を作り出せたならば、
❹設定される制限があっても、態度に対するものではなく、行動に対する単純なものである場合は、（子供の場合、窓を割ったり部屋から出たりすることは許されないかもしれませんが、窓を割る気持ちになることは自由であり、その気持ちは完全に受け入れられます。大人のクライアントが面接に1時間以上は許されなかったとしても、もっと時間が欲しいという彼の希望自体は完全に受け入れます。)
❺カウンセラーが面談では、感情を表す態度に対する深い理解と受容を伝えることのみにすることで、つまりクライアントの態度を伝え返し、明らかにすることに専念し、そこに承認も不承認も含まない場合、
⑥カウンセラーが前述の原則に反する表現や行動を控える場合は、それは具体的には質問、探り、非難、解釈、アドバイス、提案、説得、安心感などを控えることを意味します。

これらの条件が満たされるならば、ほとんどすべてのケースにおいて以下の結果が生じると確信を持って言えるでしょう、と述べています。この「治療の実現の条件」を、1957年に『治療におけるパーソナリティ変化への必要にして十分な条件：The necessary and sufficient conditions of therapeutic personality change. 』という論文で発表されたカウンセリングにおいて「人格の変化が生じるときの条件」いわゆる我々の知る

6つの条件と比較しましょう。

①2人の人間が心理的に接触していること,
➋うち一方の人、すなわちクライアントと呼ばれる人は、自己不一致の状態にあり,傷つきやすく不安な状態にあること
❸もう一方の人,すなわちセラピストと呼ばれる人は, 関係性において自己一致し統合されていること
➍セラピストはクライアントに対して無条件の肯定的 (積極的) 関心を体験していること
❺セラピストはクライアントの内的参照枠の共感的理解を体験しており、その体験をクライアントに伝えようと努力していること
⑥セラピストの共感的理解と無条件の肯定的関心をクライアントに伝えることが最小限でも達成されていること、

と比べると、

「治療の実現の条件」の❹と❺は「人格の変化が生じるときの条件」の➍の無条件の肯定的 (積極的) 関心にほぼ当てはまります。
一方、本書の「治療の実現の条件」の①②のクライエントの自律・主体性は、6つの条件には含まれていません。さらに6つの条件で重要な➋、❸の自己一致・不一致の観点や❺の共感的理解が「治療の実現の条件」には含まれていません。

このことを本書が出されたタイミングとロジャーズ先生の著作の履歴と内容を比較してみます。

つまり、6つの条件が提案される「The necessary and sufficient conditions of therapeutic personality change」より前の論文になります。

つまり6条件を提示した10年以上前の段階で、「治療の実現」＝「人格の変化」が起きるの必要な条件があることに気づき、初作の「The Clinical Treatment of the Problem Child」で言及した個人の尊重の思想や「Counseling and Psychotherapy」の人は本来成長の自らの農学の学びからと思あれる考えが①や②に籠められ、６条件の心理的に接触に至る③の考えが読み取れます。つまり洗練された６条件に至る前の黎明期のロジャーズ先生の研究課程を伺い知ることのできる論文と言えると思います。