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問題地図とポイントアプローチ(PMPA法)

「底流に流れるもの(4)」では、時代を超えて、様々な理論の底流として流れるような共通の考えとして、1950年代の人間性心理学(Humanistic Psychology)の流れの、ロジャーズの来談者中心療法、マズローの欲求階層説、マグレガーのY理論を取り上げました。

 今回は、キャリアカウンセリングのプロセスに、マズローの欲求階層説の5段階を参照した相談者の問題を構造した「問題地図」と、ロジャーズの来談者中心療法及び基本的なカウンセリング技法を問題構造に合わせて適用する「ポイントアプローチ」を考えたフレームワークを適用したものを「問題地図とポイントアプローチProblem Mapping and Point Approaching」、以降略してPMPA法として提案します。

目次

様々なカウンセリング技法とPMPA法

 これまでに提唱されている、カウンセリングプロセスの理論と併記して概観します。

焦点理論提唱者
役割(ヘルパー・ヘルピー)と段階ヘルピングロバート・R・カーカフ
リレーション(意識レベル)と段階コーヒーカップ・モデル國分康孝
体系的アプローチと詳細ステップシステマティック・アプローチピューイ(Peauy,V.)等
問題地図とポイントアプローチPMPA法オンラインキャリアらぼ

PMPA法の詳細

PMPA法は、「問題地図」と「ポイント・アプローチ」の二つのフレームワークからなります。

問題地図

 先ず、相談者の問題を細分化して、マズローの欲求階層説の5段階の構造のパレットに、配置します。これにより、相談者の状態が構造的に理解できます。つまり、目の前の相談者が「今、何に苦しんでいるのか(どの欲求の阻害か)」「何が満たされれば次のステップに進めるのか」を分析する上で、マズローの欲求階層説はこれ以上ない「地図(=アセスメントツール)」になります。ここでは問題が配置されたパレットを「問題地図」と呼びます。

 例えば、 

就職活動中の学生Aさんが、周りがどんどん内定が出ていくなかで、面接も失敗続きで、家族やクラスの仲間から言われることも気になって、ますます方針が定まらず、落ち込んでキャリアセンターに相談に来た

というケースを取り上げます。

マズローの5段階のパレットに配置してみましょう!

第2段階 安全欲求の問題

「面接も失敗続きで、・・ますます方針が定まらず、落ち込んでキャリアセンターに相談に来た」

何処にも安心な居場所がない

✖【安全欲求の欠乏】

第3段階 所属と愛の欲求の問題

「周りがどんどん内定が出ていくなかで、・・・家族やクラスの仲間から言われる」

周りから浮きたくない、家族の期待を裏切りたくない

✖【所属と愛の欲求の欠乏】

第4段階 承認と自尊の欲求の問題

「面接も失敗続きで、・・落ち込んで」

面接に受かって、家族やクラスの仲間に認められたい

✖【承認と自尊の欲求の欠乏】

第5段階 自己実現の欲求の問題

「就職活動中・・から言われることが気になって、ますます方針が定まらず」

様々な不安で他人の評価が気になり、自分のしたいことが判らないので方針が定まらない

✖【自己実現欲求の欠如】

つまり、

第2段階の安全欲求から第4段階の承認と自尊の欲求が満たされていないと、マズローの提唱するように下位の欲求が満たされないために、上位の欲求段階である第5段階の自己実現欲求は生起されません。その結果、自分は社会人としてどうしたいかの軸が見えてこないので、どのように就職活動をすれば良いかが判らない状態で下位の欲求が満たされない不安の中で彷徨います。

学生Aさんの問題地図

いきなり、職業マッチングや面談対策をする前に、先ずカウンセリングで、第2段階の安全欲求から第4段階の承認と自尊の欲求が満たされるように、各段階の問題のポイントに適した技法でアプローチするのが望ましいと考えています。

ポイント・アプローチ

学生Aさんが訪ねたキャリアセンターのカウンセラーが行うと効果的なアプローチを問題地図で考えてみます。

第2段階 安全欲求の問題へのアプローチ

何処にも安心な居場所がない

面談環境:クラスや家から離れ、周りの目が気にならない静かな場所を準備する
守秘義務順守:ここで話すことは、他に漏らすことが無いことを伝える

Aさんにとって安心安全な場所(安全基地)の提供する

〇【安全欲求の充足】

第3段階 所属と愛の欲求の問題へのアプローチ

「周りから浮きたくない」

(インフォームドコンセント)
心理契約:ここはAさんの問題を大事に扱ってくれる場所である
治療同盟:カウンセラーはAさん自身が前に向けるよう、協力するパートナーである

〇【所属と愛の欲求の充足】

第4段階 承認と自尊の欲求の問題へのアプローチ

「面接も失敗続きで、家族の期待を裏切りたくない」

積極的傾聴の姿勢(相談者中心療法)
受容:周りの言葉や活躍の中で一生懸命面接に臨んだのに、落ちてしまった。どのようなお気持ちだったのでしょうか?(Aさんの話をありのまま受けとめる)
共感:ご家族を大切にしたい、友人とも良い関係でいたいという、やさしいお気持ちから、皆さんを裏切りたくない思いなんですね。そんなつらい気持ちの中ここまでよく来られました。(あたかも自分ごとのように受け止める)

一致:カウンセラーは、自分自身の気持ちに偽りなく(自己一致の状態)で、不一致に苦しむAさんの行動と姿勢を承認し、尊敬の思いも込めてお伝えする。(そこで感じたことを丁寧に伝え返しする)

〇【承認と自尊の欲求の欠乏】

この最後のクライエント中心療法のアプローチは、とても大切で、第2段階の安全欲求と第3段階の所属と愛の欲求を満たすことにもなります。

自己実現の欲求の問題へのアプローチ

上の第2段階から第4段階の欲求がポイントアプローチで充足されたとすると、自己実現欲求が生じて、自ら就職活動へ向き合う姿勢が出てくるかもしれません。

「就職活動中・・から言われることが気になって、ますます方針が定まらず」

共感的リフレーミング:もし、ご家族の意見も、周りの目も、『何ひとつ気にしなくていい、誰からも100%応援される』としたら、本当はどんなこと、どんな働き方に心が動くのでしょうか?」

自分の内側(自己実現)に目を向ける余裕が生まれます。

〇【自己実現欲求の充足】

 つまりカール・ロジャーズの来談者中心療法で見ると、本来人には 自己実現傾向(Actualizing Tendency) つまり「植物が太陽に向かって伸びるように、人間には環境さえ整えば自ら気づき、治癒し、成長していく力」が備わっています。まずは「安全」と「ありのままの受容(所属・承認)」をカウンセラーとの関係の中で満たすことで、「他人の評価(承認欲求)」に依存したブレる軸から、「自分はこうしたい(自己実現欲求)」という内発的な軸へ引き上げられます。

自己実現に踏み出した相談者の希望をお聴きしながら、次の一歩に必要な職業ガイダンスの支援も出来る段階かと思います。

カウンセリングの場面のシミュレーション

  • 学生Aさん:オンラインで予約して、キャリアセンターは初めて来たけど、図書館みたいに静かで良いな・・
  • カウンセラー安全基地の提供 & インフォームドコンセント):「Aさんですね、初めてでしたか?迷ったりしませんでしたか?」(はい)「それは良かったです。良くお越しくださいました私はキャリアコンサルタントの〇〇と言います。」「初めに、ここで話すことは、他に漏らすことはありませんのでご安心ください」「もし話にくい時は無理しなくて構いませんので・・」「そして、私は、今日の面談の後で、Aさんご自身が前に向けるよう協力するパートナーとして頑張りますので、どうぞよろしくお願いいたします。」
    「今日はどうされましたか?」
  • 学生Aさん「もう、自分がどこを受けたらいいのか分からなくなっちゃって……。親は安定した大手に行けって言うし、周りの友達はどんどん内定をもらって楽しそうだし。私もそれに合わせなきゃって面接を受けるんですけど、全然気持ちが乗らなくて。結局、この前も最終面接で落ちました。もう自分は社会に必要とされてないんじゃないかって思えてきて……」
  • カウンセラー(共感的理解 & 無条件の肯定的配慮): (うなずき、遮らずに、学生の揺れる内面をそのまま映し出すように) 「周りの言葉や活躍に挟まれて、自分の行きたい方向がどんどん分からなくなってしまっているんですね。その中で一生懸命合わせて面接に臨んだのに、落ちてしまった。本当に悔しかったし、ご自身を全否定されたような、暗いトンネルの中にいるような、そんなお気持ちなんですね」
    ここがポイント: 「大手にこだわらなくていいよ」「次は頑張ろう」というアドバイスや評価は一切しません。落ち込んで、ブレブレになっている今の姿を「無条件にそのまま受容(肯定的配慮)」し、その辛さに徹底的に寄り添います(共感的理解)。
  • 学生Aさん 「……そうなんです。本当に、親をがっかりさせたくないし、友達に負け組って思われたくない。でも、自分が本当にやりたいことって何なんだろうって考えると、頭が真っ白になっちゃって……」
  • カウンセラー(自己一致 & リフレーミングによる気づきの促進): (自分自身も飾らない、誠実な態度で接しながら) 「ご家族を大切にしたい、友人とも良い関係でいたいという優しいお気持ちがあるからこそ、葛藤が深いのですね。いま、頭が真っ白になるとおっしゃいましたが、もし、ご家族の意見も、周りの目も、『何ひとつ気にしなくていい、誰からも100%応援される』としたら、本当はどんなことに心が動くでしょうか?」
    ここがポイント: カウンセラーから「100%味方である」という絶対的な安全(マズローの安全の欲求の充足)を提供されることで、学生は初めて「他者の目(承認欲求)」という呪縛から離れ、自分の内側(自己実現)に目を向ける余裕が生まれます。
  • 学生Aさん 「……誰の目も気にしなくていいなら……。本当は、名前も知らないような小さな会社でもいいから、自分が直接人の役に立っている実感が持てる、ものづくりのサポートがしたいです。親が言う『大手』とは違うけど、私はそういうアットホームなところで、コツコツ頑張るのが一番自分らしい気がします」
  • カウンセラー: 「コツコツと、直接人の役に立つ実感を持って働きたい……。そう語るあなたの表情、とても優しくて、今すごくしっくりきているように見えますよ」
  • 学生Aさん 「あ……。そうですね。親の言う通りにしなきゃって思ってたけど、私の人生ですもんね。もう一度、自分が本当にワクワクする軸で、受ける企業を考え直してみたいです。面接でも、借りてきた言葉じゃなくて、自分の言葉で話せる気がしてきました」
  • カウンセラー:「よかったです。Aさんの表情も、最初と大分変ってきましたね。もし、本当にワクワクする軸を作るのに不明な点がありましたら、お声がけください。」
  • 学生Aさん:「次の予約します。その時は、自分自身で考えた軸で、なにができるか相談に乗ってください。」

補足

 人は発達段階で養育者を中心とした、安全基地の中で欲求段階をのぼりながら、内的フレーム(自己概念)を確立していきます。やがて社会に出ると、新たな経験する中に映る思いもよらぬ、上手く行かない自分の姿と内的フレームの不一致により、心傷つきます。そのときに、傷ついたクライエントにかつての養育者の下のいた時のような安全基地を提供するカウンセラーの受容・共感・自己一致の姿勢が、染みるのではないかと思います。

あらためて、今回提唱する方法を提示します。

未だ思い付きのレベルですが、皆様のご意見もいただきながら建設的変容させていきたいと思います。

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