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PMPA法(続き)

前回、キャリアカウンセリングのプロセスに、マズローの欲求階層説の5段階を参照した相談者の問題を構造した「問題地図」と、基本的なカウンセリング技法及びロジャーズの来談者中心療法を構造に合わせて適用する「ポイントアプローチ」を組み合わせたPMPA法(PMPA-1)を紹介しました。

今回は、PMPA-1で出てきた自己実現欲求を、如何に支援するかを考えるために、デシとライアンの自己決定理論Deci & Ryan, 2000)の視点を取り入れました。

先ずは、おさらいです。

目次

PMPA-1:問題地図とポイントアプローチProblem Mapping and Point Approaching)

問題地図

 PMPA-1では、相談者の問題を細分化して、マズローの欲求階層説の5段階の構造のパレットに、配置します。これにより、相談者の状態が構造的に理解できます。つまり、目の前の相談者が「今、何に苦しんでいるのか(どの段階の欲求の阻害か)」「何が満たされれば次のステップに進めるのか」を分析する上で、マズローの欲求階層説はこれ以上ない「地図(=アセスメントツール)」になります。ここでは問題が配置されたパレットを「問題地図」と呼びます。

 マズローの欲求階層説で言われるように、下位の欲求が満たされないと、次の段階の欲求が現れません。例えば、就職活動で上手く行かない学生Aさんが、落ち込んでキャリアセンターに相談に来た時に、第2段階の安全欲求に関して「親からあれこれ言われる家や、内定をもらった同級生たちのいるクラスでは安心できない」ために、「一緒に相談できる関係の話相手が欲しい」といった次の第3段階の欲求が出てきません。順番に充足するまでは、就職活動の本来の目的である「社会で自分らしくはたらく」という、自己実現の欲求まで至りません。そうすると、基本的な方向性が見えないため、いきなり職業マッチングや面談対策をすると、ますます就活の方針は迷走します。

ポイントアプローチ

そこで、各段階毎のポイントに適した、カウンセリングアプローチとして、心理カウンセリングの基本的なカウンセリング技法(安心な面談環境や守秘義務遵守などインフォームドコンセントの提供)及びロジャーズの来談者中心療法(積極的傾聴の姿勢)を問題構造の各ポイントに合わせて適用します。(PMPA-1)

これにより、クライエントの学生A君は、やっと「社会で自分らしくはたらく」という未来の自己実現への欲求に目覚めることが期待できます。

この自己実現の欲求を、自己実現の一言で表すにはものと足りないと感じました。そこで、最近知った「デシとライアンの自己決定理論」の視点を取り入れてみようと思いました。

自己決定理論(「日本の人事部」参照

 自己決定理論は、1985年にアメリカの心理学者であるエドワード・デシ(Edward L. Deci)氏とリチャード・ライアン(Richard M. Ryan)氏によって体系化されました。
 当時の動機づけ研究では、報酬や罰則などの外部からの刺激(外発的要因)が行動を決定するという考え方が主流でした。しかし、デシ氏は実験を通じて、「パズルを解く」などの内的に面白いと感じる活動に対して金銭的報酬を与えると、逆に活動への自発的な意欲が低下してしまう現象(アンダーマイニング効果)を発見しました。
 この発見は、外発的な報酬が必ずしも動機づけを高めるわけではないことを示唆し、人間の内的な心理プロセスである「内発的動機づけ」の重要性に光を当てました。

 自己決定理論では、人間には生まれつき3つの基本的心理欲求があると考えます。

  1. 自律性(Autonomy):自分自身の行動を自主的に選択し、コントロールできる感覚。
  2. 有能感(Competence):自分が有能で効果的に行動できるという感覚。
  3. 関係性(Relatedness):他者との良好な関係や社会的つながりを感じる感覚。

これらの欲求が満たされることで、内発的動機づけが高まり、学習効果、創造性、幸福感、パフォーマンスの向上につながり、まさに自己実現へ近づくと捉えました。

PMPA-2:自己実現の伴走へ

PMPA-1により、問題をもって訪れたマイナスの精神状態のクライエントをゼロの安定状態へ一旦戻すお手伝いをします。つづいて、自己実現の欲求の出てきた人に対して、如何にかかわるかを「デシとライアンの自己決定理論」の視点で見てみます。

 3つの基本的心理欲求のうちの、有能観や関係性に関して、PMPA-1の3つのポイントアプローチで、ある程度満たされたクライエントは、その名の通り自律的、主体的に自らの未来を考え始められるようになります。この視点は、マズロー・ロジャーズ・マグレガーとも共通する「人(生き物)は自ら成長しようとする」という人間観に基づきます。
 そこから、ついに自己実現伴走アプローチ(PMPA-2)に入ります。

  1. 自律性:自分自身の行動を自主的に選択し、コントロールできる感覚」が湧いきたクライエントを導くのではなく、自律的に脚本を書くクライエントの言葉に耳を傾け、温かく見守る伴走者となります。
  2. そこではクライエントが「有能感・関係性:自分が有能で効果的に行動でき、他者との良好な関係や社会的つながりを感じる感覚」を維持できるよう、引き続き積極的傾聴の姿勢で接します。
  3. ここから「自己キャリア」を考える上で、必要な支援がクライエントとの間で明確になれば、一般的なキャリア支援あるいは就職ガイダンスのステージへのカウンセラーの役割も移行します。

PMPA-1から2への役割のグラデーション

PMPA-1とPMPA-2で、カウンセラーの役割(立ち位置)やアプローチの軸がグラデーションをもって、少し変わっていくことをメタ認知すると良いのではと考えています。

  • PMPA-1(マイナスからゼロへ):
    • 主な役割「安全基地の提供者・安心の容器」
    • アプローチ
      • ロジャーズの積極的傾聴の姿勢(受容・共感・一致)
      • インフォームドコンセント(心理契約・治療同盟)
      • ラポール形成/心理的安全性の構築(面談環境・守秘義務順守)
  • PMPA-2(ゼロからプラスへ):
    • 主な役割「自己実現の脚本の聴き手・問いかけの伴走者」
    • アプローチ
      • デシの「自律性」を引き出す開かれた問いかけ
      • 未来のビジョン化
      • 内発的動機の探索
      • クライエントのニーズの共有化

最後に

このアプローチにより、カウンセリングにおいて、
「今、目の前の相談者にどんな支援態勢をとるべきか」という最初のアプローチの判断基準として、
「相談者が元気になったあと、どうやって『その人らしい未来(自己実現)』へ伴走するか」というゴール設定の具体的イメージすることに役立てたら、と期待しています。ご意見、ご指摘等ありましたらお願いいたします。
以上です。

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