“Happiness only real when shared” キャリア原書輪読会より 詳細

足場でも良いみたい

「発達心理学概論(’17 放送大学テキスト)」を読んでいたら、ロシアのヴィゴツキー(Vygotsky, 1896-1934)の「発達の最近接領域」の説明で、「足場かけ」「足場外し」といったワードが出てきました。

足場:スキャフォールディング(scaffolding)は、輪読を終えようとしている “Career Construction Counseling Manual” に 何度も出てきたワードでした。

ゴロワーズ

何と!見直したら6か所もありました。

例えば”Career Construction Counseling Manual”の核心部を表わす段落では、

To arrange client micro-narratives into this general plot, counselors use the pattern-recognition schema embedded in the deep-plot structure of the CCI questions. The scaffolding questions have been sequenced to link clients’ micro-narratives into a macro-narrative. The five story-crafting questions inquire about self, stage on which to perform the self, script for the next act, advice on how to begin, and a basic perspective on the transition.
クライエントのマイクロナラティブを包括的なプロットにアレンジするため、カウンセラーはCCIの質問のプロットに深く埋め込まれたパターン認識のスキーマを用います。その足場となる質問は、クライエントのマイクロナラティブをマクロナラティブに繋がるよう順番に並べます。その物語構成のための5つの質問は、自分自身、その自分を演じるためのステージ、次の場面への脚本、それをどう始めるかの助言、そしてこの転機に対する基本的な視点について尋ねるものです。(ゴロワーズ訳)

最初の段落でscaffoldingの訳は建築現場の足場みたいで違うのでは?のお声があり、各段落で担当者が「足掛かり」「きっかけ」「骨組み」「土台となる」など苦労してました。思えば一つの英単語を複数の日本語の語彙でなんとか表現する良いワークになりました。

そして最後の段落の担当の Mal さん方が Chat-GPTを活用して「スキャフォールディング(scaffolding)は、教育や心理学の分野で使われる用語で、学習者が新しい知識やスキルを習得する際に、サポートを提供するプロセスを指します。」と紹介してくれました。

ゴロワーズ

Mal さんの何時もながらの良いアシストでした!

足場というと建築現場の表現のように思えましたが、教育分野では足場かけ(Scaffolding:スキャフォールディング)という用語が良く使われ、学習・問題解決を促すために、大人・教師などが、このことばを使って、子ども・学習者をサポートすることを指すようです。

ところで、このヴィゴツキーさんについて少し、

彼はその当時流行ったピアジェの生物学的観点に立脚した発生認識論に基づいた視点に対して、社会文化的・歴史文脈の重要性を強調した方です。

例えば、

幼児が集団の中で誰かに伝える出なく言葉を発するのをピアジェは子供の未熟さの現れと見ました。一方ヴィゴツキーは外言」から「内言」に移行する過渡期の現象と反論しました。つまり幼児は人に伝える「外言」にたいして、自分の行動を計画したり、考えたりする道具として言語として「内言」を使い始め、先ず思考をひとりごととして音声で表現し、やがて内面化する過程なのだと考えたのでした。

この考えに最後はピアジェも同意したそうです。

また子供の知的水準の発達は、独力でやり遂げる「現在の水準」と大人のサポートや仲間との共同があれば出来る「明日の水準」があり、この二つの水準の開きを「最近接領域」と呼び、教育はこの領域に入り子供の発達を押し上げるべきと主張しました。

この「明日の水準」への働きかけを「足場かけ」(Wood他, 1976)と呼び、幼児が自力で出来るようになったときは「足場外し」を行うことを教育の中で意図的に行うを流れを作ったようです。

どうやら教育理論や社会文化理論に基づいた研究や教材では「足場」の表現はふつうに使われる表現のようです。回り巡って、一見直訳みたいですが、教育理論の世界を知ると、そのまま「足場となる質問」でも良かったと思うようになりました。

ゴロワーズ

何故か私はこどもの自転車の補助輪を思い出しました。

CCIの5つの質問は、クライエントのライフポートレート(キャリアテーマを含む)を伺い知るための、我々カウンセラーの「補助輪」いや「足場」と言えるかもしれません。

ゴロワーズ

我々に「補助輪無し」「足場外し」の日が来るのでしょうか?まだ遠い気がします。しばらくはCCIの5つの質問を活用したいと思います。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

目次