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自己防衛がいっぱい(2)

 前回の(1)では、自己防衛のさまざまな心理作用を、防衛機制(内的な不安からの防御)と、社会心理学的バイアス(社会関係や自己認識の維持)の2軸で考えてみました。
 今回は、マクアダムスとオルソンのパーソナリティの心理的発達の3つの視点「アクター(行為者)、エージェント(主体)、オーサー(語り手/構築者)」で考えてみます。このモデルは、人間が発達とともに「自分という存在(Identity)」をどのように構築し、意味づけていくかを説明するフレームワークです。サビカスが、キャリア構築理論(2013)において、様々理論をメタ理論として成立させるために、このフレームワークを取り入れています。 自己防衛の各心理作用を、「人生のどの心理レベルで機能している自己防衛か」という軸で整理すると、それぞれの役割と発達的意味がより鮮明になればと思います。

目次

マクアダムスの3層モデルによる自己防衛の再体系化

各層における自己防衛のメカニズム

1. アクター(Actor:行為者)としての防衛

  • テーマ:「どう行動し、どう見られているか」(特性・行動レベル)
  • 発達段階:幼少期〜(他者を意識し始める時期)

アクターの層では、社会的な場面で「群れの一員として安全に生きていくこと」「エネルギーを無駄遣いしないこと」が最優先されます。ここでの自己防衛は、集団での生き残りと役割維持を目的としています。

  • 同調(conformity):「周囲と同じ演技(振る舞い)」をすることで、拒絶や孤立という社会的死から身を守る。
  • 傍観者効果(bystander effect) 集団内で一人だけ目立つリスク(出しゃばり、失敗の責任)を回避し、安全な観客の位置にとどまる。
  • 内集団びいき (in-group favoritism) 自分の属する劇団(仲間)の価値を高めることで、アクターとしての自分の居場所と安全を確保する。
  • 正常性バイアス(normalcy bias) 常にパニックを起こして演劇を中断(感情の過負荷)させないよう、脅威を小さく見積もって平穏を装う。

2. エージェント(Agent:主体)としての防衛

  • テーマ:「何を目指し、何を達成したいか」(目標・価値観レベル)
  • 発達段階:児童期後半〜思春期(目標を持ち、意思決定する時期)

エージェントの層では、自分の意志で目標を設定し、それを達成しようとします。ここでの自己防衛は、目標達成に向けた「自尊心」「自己効力感(やればできる感)」の維持が目的です。

  • セルフハンディキャッピング: 「目標に向かって挑戦する自分」の能力不足が露呈するのを恐れ、あらかじめ言い訳になる障害を作りだしてエージェントとしての無能感から自尊心を防衛する。上手く行ったときは障害があったにも関わらず乗り越えられたと、自分の能力に対する帰属が割り増しされ、自己高揚につながる。
  • ストレスコーピング:目標追求の過程でストレッサーにより生じたストレスに対して、ストレッサーそのものを解消する問題焦点型コーピングや心理的な苦痛を軽減するための情動焦点型コービングにより、ストレスを軽減し、エージェントとしての行動不能状態を防ぐ。

3. オーサー(Author:語り手/構築者)としての防衛

  • テーマ:「自分は何者で、どんな人生を歩んできたか」(人生の物語・アイデンティティレベル)
  • 発達段階:青年期〜成人期(過去・現在・未来を一貫した物語として統合する時期)

オーサーの層では、自分の人生に一貫した「意味」を与え、人生の物語を紡ぎます。ここでの自己防衛は、「人生の物語の一貫性と肯定感」を守ることです。

  • 抑圧(oppression) 主人公(自分)の物語にとって受け入れがたい悲惨な事実や、不都合な欲望や考えを意識(自分の物語)の「脚本の外(無意識)」へと追いやり、物語全体の崩壊や自我の危機を防ぐ
  • セルフサービングバイアス:「成功は自分の能力や努力、失敗は運や環境のせい」と帰属する(物語化する)ことで、自分の人生の物語を自己高揚的に「常に主人公が成長・活躍する肯定的な物語」と捉える。

3つの層を貫く「自己防衛の発展プロセス」

 このモデルで捉え直すと、人間の自己防衛は年齢や精神的成熟に伴って、より高度で複雑なものへシフトしていくことが分かります。

  1. アクターの防衛(身体・集団的):まずは「周りに合わせて生き残る」(自立)
  2. エージェントの防衛(心理・達成力):次に「自分の目標プライドを守る」(自律・自尊)
  3. オーサーの防衛(存在・意味):最終的に「自分の人生の意味物語を守る」(自己実現)

 このように、マクアダムスの視点を入れることで、「単なるバイアスの箇条書き」だった心理作用が、「人が自分という存在(アイデンティティ)を構築し、守っていく発達の物語」として見事に体系化されます。

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