「底流に流れるもの」では、時代を超えて、様々な理論の底流として流れるような共通の考えを切り出しています。
今日は、エリク・エリクソンの「ライフサイクル論」とナイジェル・ニコルソンのトランジション「4サイクルモデル」、最後にクーパー&ホイットニーの「アプリシェイテイブ・インクワイアリー」に共通する「サイクル」を取り上げたいと思います。
そもそもはエリク・エリクソンの ライフサイクル論の“サイクル(Cycle)”という言葉に対する疑問でした。一度しかない人生において、サイクルの言葉通り、原点に戻ることがあるのでしょうか? 輪廻と言う言葉がありますが、まさに一度しかない人生の終末において、生まれた時に戻る感覚というのは理解しがたいものがありました。
その考えに変化をもたらせたのは、”Identity Youth and Crisis”の、意義深い老年期(A meaningful old age)の記述でした。
つまり、個人としてはたった一つの人生であっても、次の世代に影響を与え、さらには社会へと、自ら培った資質を流し込む形で、大きなサイクルに関わっていると見ることができました。
エリク・エリクソンの「ライフサイクル論」
先ずは、エリクソンが、老年期の前の成人後期の発達課題とした「ジェネラビリティ(世代性・生殖性:generability)」がまさにその次の世代への典型的な関わりを示してくれます。
ジェネラビリティ:養育者の子育てや職場の後進育成を通じて次世代を育てることが成人後期の発達課題
親子の養育関係の場合は下記の様な、前の世代や次の世代との相互の関係の中で、「親が自ら培った資質を子に流し込む」、あるいは逆に「子の影響で親が成長する」と言った相互作用になります。

この相互作用は、自己が死により離脱した後も、その伝達したものの影響で次の世代は生き続けます。これを歯車に例えると、

つまり、個人の自己の人生は、一度限りの単線のように見えましたが、回る歯車として見ると、“サイクル(Cycle)”と言う表現は、しっくりしてきました。
そして、「次の世代に影響を与え、さらには社会へと、自ら培った資質を流し込む形で、大きなサイクルに関わっている」をブロンフェンブレナーの生態学的モデルに載せてみました。

私は、今や、世界中と自分が繋がっている感覚に陥りました。ここまでくると、エリクソンの言う「最終的によく生きたと自分の人生を受け入れることができたとき、統合が達成され、知恵が獲得される」の意味が染みてきました。
ナイジェル・ニコルソンのトランジション「4サイクルモデル」
転機、トランジションと言えば、ナンシー・シュロスバーグとウィリアム・ブリッジズが良く知られています。この2人の転機の捉え方や乗り越え方は、素晴らしいものがありますが、何れも転機を直線的な3段階で考えています。
一方、ここで取り上げるナイジェル・ニコルソンはトランジションは、転機を「古い役割」から「新しい役割」への移行を完了するまでにかかる反復的な学習サイクルとして捉えます。(HCC JAPAN LLC.のWebSite参照)

- 準備 (Preparation):新しい役割の情報を集め、初期の期待や自己変革の決意を形成する。
- 遭遇 (Encounter):現実の役割と事前の期待とのギャップに直面し、適応スタイルへの初期選択を迫られる。
- 順応 (Adjustment):個人の適応スタイル(4パターン)が実行され、確立される最も重要な段階。
- 安定化 (Stabilization):移行が完了し、新たな役割と自己の関係が確立される。この質の高さが、後のキャリア成長を決定する。
そして、「節目をくぐるほど人は成長する」という輪廻的思想に近づいてきました。
クーパー&ホイットニーの「アプリシェイテイブ・インクワイアリー」
続いては、組織開発のAI、人工知能のAIのArtificial Intelligenceではなく、Appreciative Inquiry(以降AI)です。Appreciative は 形容詞「真価(良さ)を判る、感謝の」で、Inquiry は、「尋ねる、問いかけ、質問、探求」です。
つまり「真価を認めるための問いかけ」 の意味です。
キャリアカウンセリングのクライエントに対して成長を信じて問いかけるロジャーズの姿勢と共通するところがあります。組織の問題を人間関係の観点で捉える時に、その問題を悪いものとして解決する問題解決志向ではなく、その問題を視点を変えポジティブに変換するためのきっかけとしての「問い」の意味を持ちます。
このAIは、1987年にDavid L. Cooperrider と Diana Whitneyが提唱した考えで、ソフト面からの組織開発の手法として脚光を浴びましたが、リーマンショックで一気に短期的な成果を求めるながれで下火になりました。また現代になって、従業員のメンタル問題の多くが、EAP(Employee Assistance Program)などの個人の問題としてのアプローチだけでは解決できない、個人を取り巻く環境つまり組織風土にもあるとの視点から再び脚光を浴びています。
さて、このAIのプロセスが、先日紹介した「4-D Cycle」です。
その4-Dサイクルのプロセスは下記の様に記されています。
すべてのステークホルダーを巻き込み、強みやベストプラクティスを言語化することで、システム全体を総動員します。そして「過去から現在の最良の部分」を特定します。
「発見された可能性」や、「世界は私たちに何を求めているのか?」といったより高次の目的に関する問いと関連付けて、明確で成果志向のビジョンを創出します。
理想的な組織の提案内容を作成し、人々が「ポジティブコア」を活用して新たに表現された夢を実現できると感じつづけられるような組織デザインを言語化します。
システム全体の肯定的能力を強化し、希望を構築し、継続的なポジティブな変化と高いパフォーマンスを維持するための勢いを支えます。
そして、図に表すと下記の様なサイクルなります。

この発見(Discovery)、ドリーム(Dream)を見出す際、さらには4-Dのプリプロセスである「選択的フォーカストピックの選択」においても、アプリシェイテイブ・インタビュー(appreciative interview)を行います。
以下のようなインクワイアリーになります。
あなたの組織で、最も最高の経験だと考える瞬間について述べてください。最も熱中し、生き生きと活力にあふれていたと感じた時のことです。
控えめにならずに、あなた自身、あなたの仕事、そしてあなたの組織について最も価値があると思うことを教えてください。
組織が最良の状態にあるとき、その生命力を与える主要な要素は何でしょうか?
あなたの組織の今から10年後を想像してみてください。すべてがあなたがずっと願っていた通りになっているとしたら、何が違ってますか?この理想的な組織に対して、あなたはどのように貢献しましたか?
つまり、「選択的フォーカストピックの選択」→「4-Dプロセス(小規模)」→「4-Dプロセス(組織全体)」と繰り返し、このサイクルが行われます。最初は、1対1あるいは少数から、個人の夢や価値・テーマを語るところから始めて、小グループでの目標の価値・テーマを描き、さらに人数を増やしながら組織全体のテーマ(ポジティブコア)を見出します。

ライフサイクル同様、個人サイクルがさらに、グループ、組織全体へと広がっていきます。いわゆる、社内文化、企業体質をソフト面でポジティブに変容させることを目指すのが、AI(Appreciative Inquiry)です。

以上になります。何か状態変容を伴うような活動には、必ずサイクルがあり、隣り合ったサイクルに、パワーを伝搬していき、大げさに言えば世界の輪廻と繋がっている気がしました。
皆様は如何でしょうか?何か、私は仏教におけるマニ車が思い浮かびました。








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