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ベン図の点線

先日、キャリアチェンジに成功するために必要な能力や環境というお題で、エンプロイアビリティの説明をしました。

エンプロイアビリティとは、1950年代以降以降から使われている、雇用する(employ)と能力(ability)を組み合わせた概念で、「雇用される能力」 「雇用可能性」 などと訳されています。 

上図は、日本経営者団体連盟のNED(ネッド)モデルで、A:内的エンプロイアビリティとB:外的エンプロイアビリティの関係を示しています。

エンプロイアビリティA(外的エンプロイアビリティ) B(内的エンプロイアビリティ)

外的エンプロイアビリティ:労働移動を可能にする能力
内的エンプロイアビリティ:企業内で発揮され,継続的に雇用される能力

主に企業の評価制度や研修は内的エンプロイアビリティに関連していて、外的エンプロイアビリティは自助努力に頼っているため磨きをかけているのは啓発性の高い個人に限られていました。

上のような図はベン図と呼ばれ、

ベン図(ベンず、もしくはヴェン図、英: Venn diagram)とは、複数の集合の関係や、集合の範囲を視覚的に図式化したものである。イギリスの数学者ジョン・ベン (John Venn) によって考え出された。複数の集合を考える際には、各集合をひとつの閉曲線(例えば円)で表し、相関関係をその閉曲線の交わり方によって表すことができる。(Wikipedia)

つまり、上図はいわゆるベン図により、A:内的エンプロイアビリティの集合とB:外的エンプロイアビリティの集合の関係を示したものです。

ところで、こんな説明していた時に、上のNED(ネッド)モデルの図を見て、

この破線は何ですか?

との質問がありました。引用元には説明がありませんが、

破線の左下側の「自助努力により身に付けた能力」の範囲と、右上側の「企業による支援及び仕事を通じて身に付けた能力」を区分けしているようです。多くの「自助努力により身に付けた能力」はAの外的エンプロイアビリティと重なり、「企業による支援及び仕事を通じて身に付けた能力」とBの内的エンプロイアビリティは重なっていますが、「自助努力により身に付けた能力」はBに役立つこともあるし、「企業による支援及び仕事を通じて身に付けた能力」がAに役立つこともあり得ます。

ただこのような線分の場合で、説明が無い(空白)な場合は、

柔軟性・拡張性のある枠組み
この図が固定的な分類ではなく、状況や時代によって変化する能力の構造を柔軟に捉えていることを表しているかもしれません。
読者への問いかけ
あえて空白にすることで、「あなた自身はこの枠に何を入れますか?」という思考を促す仕掛けになっている可能性もあります。 このように、空白の点線は「余白」としての意味を持ち、図の完成度を高めるというよりは、むしろ読者の想像力や解釈を広げるためのデザイン的工夫かもしれません。

転職が一般的でなく,グローバル化やIT化がそれほど進行していなかった時代には、内的エンプロイアビリティであるBの能力を社員に身につけてもらうことで十分でしたが、転職が一般化した現代では、外的エンプロイアビリティであるAの能力を高めるための研修や自己啓発の支援を行う必要性が高くなってきました。(以上、JILPT「エンプロイアビリティ教育の可能性(山本寛)」より)

1990年代以降、大企業においても雇用の流動性が高まり、組織に囚われず個人に主体を置いたニューキャリア論が唱えられるようになりました。その代表的な考え方のひとつが、バウンダリーレス・キャリアです。Michael B. ArthurとDenise M. Rousseauは、”The Boundaryless Career: A New Employment Principle for a New Organizational Era”(1996)の中で、

Employment (雇用)の意味を

Old meaning: the action of employing a person; alternatively, a state of being employed, or a person’s regular occupation or business.
New meaning: a temporary state, or the current manifestation of long-term employability.
古い意味:人を雇用する行動;または、雇用されている状態、あるいは人の定職またはビジネス。
新しい意味:一時的な状態、または長期的に雇用される能力の現在の顕示

流動性のある時代にこそ、一時的に雇用される状態が起こり得て、かつ長期的に雇用されるのに必要な能力(エンプロイアビリティ)を持った状態をも実現するために、個人は自分を磨き、組織はそれを支援するバウンダリーレス・キャリアの時代になったと言えると思います。

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