「キャリア原書輪読会」「ずっと金の糸」募集中です! 詳細

四つの<物語>で学ぶ(8)ウィリアム

「サビカス キャリア構成理論 四つの〈物語〉で学ぶキャリアの形成と発達」の第四章 「守る人の義務(The Obligation of a Guardian)-ウィリアムの軌跡」を輪読会メンバーTKさんの要約で紹介いたします。(Website向けの書式変更のみゴロワーズが行いました。)

守る人の義務(The Obligation of a Guardian)
-ウィリアムの軌跡ー

ひとことでまとめると

◇アイデンティティの早期完成による葛藤人生。両親から与えられた役割(家業)を、自己探索することなく、確実性と安定性で選択。自立・自律を欲する葛藤を感じながらもじながらも、生涯、それを義務として果たし続けた。

  さらに余計なひとこと(TKさんの感想)
◇40年に渡る綿密な調査、テストをもとに、関連理論を統合的に体系化して事例に適用。壮大な社会実験?
◇特に、巻末の監訳者あとがきがCCTの真髄かと勝手に理解
「私の中にも、少しずつ四人がいます」「道を拓く人も、守る人も、道を探す人も、漂う人も。皆が、自分が受動的に苦しんできた捉われを、「仕事」を通して能動的にマスターして人生を生き抜いてきた・・・「全部のクライアントを<道を拓く人>にするのが、キャリアカウンセリングではないのだ
◇ (そのわりには)ライフポートレートと分析において、外形的にはそれなりの成功者であり、(宝石商として)補償的ながらもそれなりの自己実現を果たしているウィリアムについて、比較的ネガテイブな描写が見受けられる。
◇そもそもこのような、自分/家族/社会の規範に縛られ、家族を顧みず、葛藤しながらも、何かに追われるようにガムシャラに働き続ける人はけっこういる(特に昭和の時代)。そして、自らを内省することなく、美しく誤解したまま自己満足の生涯を送る人は、ある意味、“おしあわせな人”である。誰がそれを評価できようか? (素朴な疑問)

両親から与えられたアイデンティティに義務的に従う事例

◇自己覚醒の危機を経験することなく、自己の可能性のオプションを探求する期間もなく、親が決めた道を進む。健全な家族関係/家族員との相互依存。親が期待することを行い、家族の承認を求め、他人の意見を過大評価し、自分の評判を気にする。勤勉で品行方正。平穏だが外部からのフィードバックに非常に反応しやすい性格になる。
◇自分の好みを押し殺し、忙しくすることで不安を回避。不安でアンビバレントな愛着スキーマ。内向的で規範を受け入れる傾向
◇他人を失望させることを避け、自分がすべきことをやる予防スキーマによって意欲的なアクターになる適応戦略
◇オーサーとして共同体に順応。守る人。制限されたキャリアストーリーを構築
◇家族への義務を果たすという先行要因に始まり、結果として達成された成功と安定は、不満によって台無しになるストーリー(とまで言っていいの?)

キャリア構成とスキーマ戦略

目次

第1部 ウィリアムのライフポートレート

中西部の小さな町で製粉業を経営。高祖父が1880年に創業。以来、曽祖父、祖父、父が引き継ぐ

父 アーサー

若くして家業を引き継ぎ。完璧なビジネスマン。地域社会のリーダー。MBA取得。工場を拡張。
「私の子供たちが幸せで成功した市民になるのを見届けたい」

母 イライザ

両親から優秀な人間になるよう期待 優等生会員地域活動、主婦、母としての役割も。「子供たちの世界が趣味」

弟チャールズ

「最高の子。勤勉。飛び級。スポーツ万能。野心的」(母)。「ナンバーワンになりたがった」→ウィリアムとの決定的な違い。(後に大学教授。家族で旅行したりと対象的な人生を送る)。兄として優秀な弟に追い越されないために、能力や成功を測る別の基準を確立する必要性。弟の脅威から逃れるために、多大なエネルギーが必要だった、とは語れられていない(とのことだが、それを示唆しているように思われる)。

◇ウィリアムのキャリア発達

「優しい子人付き合いも抜群素晴らしい心と性質」「平均以上の能力。でも、もっと執着心や向上心をもってもらいたい」(母)。怠け者という評価。算数ゲーム/チェス/宝石コレクション/勉強を求められる。
会社を継ぐこと 父と母の希望通りにする
小学校時代の不遇(行きたくない/母は登校を強制)

◇キャリア探索

高校成績伸び悩み簿記やタイピングが好き 父の会社を継ぐ意思財務や会計に興味
課外活動に夢中(学生新聞、卒業アルバムマネージャー、フランス語クラブ、宝石クラブ、バンドやオーケストラ)
大忙し、燃え尽き状態、週末はぶっ倒れてる。平均点は90点で、優等生協会に入れず「痛手」。
アイビーリーグ成績上位を狙う気概は欠けていた。いい学校に入れたので、「もう自分の力を証明する必要はない」と安堵。ジャーナリスト活動、友愛クラブ。宝石商活動。
(家庭ではできなかった自由に動き、自立性を養い、物事を成し遂げる楽しみ
学士号取得特別プログラム、会計学位。MBA。フィラデルフィアの食品メーカーに就職、結婚

◇キャリア確立

入社して4年大きな昇進。しかし職場にも都会生活にも嫌気。実家に戻り、父の工場でエネルギッシュに働き、実績を上げる。「物事を形作り、構造化し、取引をまとめること大好き。創造性」。地域・福祉活動も。
父親がいることで落ち着かない。きついペース。「困難な状況」。自由がない。ストレスを実感。
35才中年としての発達課題に直面。休暇はただ疲れをいやすためのもの。
45才でゴルフやテニス、怒りを発散させるため。

◇キャリアマネジメント

59才のとき自分の境遇を語って「問題解決する能力に恵まれてきた。それが仇となり、自分の好きなことを楽しむことができない。ただただ自分を消耗させるだけ。もう十分だ。ほっといてくれ!痛みと悲しみ
48才突然の離婚。信頼関係/共感関係が希薄。放蕩息子、娘と対立。不満やいさかい、葛藤といらだち。周囲との緊張関係。
父親の死。「父に理不尽に利用された」感。「母親と一緒に暮らすのは不可能」

3つの仕事領域。(1)製粉所、(2)不動産開発。苦労の連続。「多くのことを引き受けすき」。問題だらけ。(3)宝石商、人生における数少ない避難所。小一時間こもって宝石のネット取引。狭い友達関係。内発的満足。

自分の夢に向かって行動することは、怠慢、愚か、間違いであるという信念。
(やりたいことではなく)やるべきことをやる、のが自分の原点。
(対象的に)弟からの暗黙のメッセージ「やりたいことは何でもやりなさい」
「(母から言われ続けた)「あなたには義務がある」。・・・一番嫌いな言葉です」(矛盾した反応。人から言われるのではなく、あくまでも自分の選択で義務を果たしているのだ、と思い込もうとしているのか?)
引退する夢もあるが、たぶんこれからも働き続けるのでしよう!(とかなり皮肉っぽくライフポートレートを締めています

第2部 自己構成とキャリア構成(の評価)

自己構成

追い込まれた人間、日常の仕事に全精力、多くの義務感に追われ、衝動を抑制、喜びのない人生

自己構成プロセス

アクターとして:

不安・アンビバレント愛着スキーマ両親から与えられた期待に縛られ、かっ反発/葛藤も。両親による、「こうあるべき」という意思決定、保護的、厳しく、自己探求を制限、感情表現の抑制、に拘束され、それに反する衝動や空想、感情を無視。親の承認を維持することに捉われ、確実性と安心感を求める心理的欲求後年、自律したい気持ちと他人を喜ばせたいという気持ちとの間の葛藤
べータ型気質(内的志向/規範受容志向)
自己主張を欠き、他人のニーズを優先。良心的な世話人、自分のニーズを否定して生きる厳格な順応者

エージェントとして:

果たすべき義務・責任を目的とする与えられた目標。義務感。家族が描いた進路
理想的な自己概念よりあるべき自己概念。両親の基準を内面化。キャリアアダブタビリティ資源は、前だけを見て、与えられた職業の選択肢とアイディアを探求するために消費された。代替案を検討することはなかった。

オーサーとして:

規範的スタイル。与えられたアイデンティティを受け入れ、義務に身を委ねる。生涯を通じて自分が何者かを知ることはなかった。

自己構成コンテンツ

タイプAの行動パターン 忙しさ、疲れにより、自己探索を不可能に

幼少期の思い出
ひとつめ、祖父と父からボール遊び(ニ人が投げてくれる。与えられる)
ふたつめ、日曜の午後、爆発事故のニュース、両親が固まった(世界の危険が家族を邪魔する)
みつつめ、FK暗殺(外の世界の脅威) (与えられるものを失うことへの不安/脅威)

お気に入りの物語「ちびっこきかんしやだいじょうぶ」小さな機関車が奮闘する物語
異常な意欲やらなきや、やらなきや」「プレッシャーの下で・・・」走り続ける日常
犠牲 顧客たちの奴隷、友人の不在、後回しにされた夫婦関係孤独感
弟「やりたいことをやる」← →私「できることは何でもやる」
少しでも自律性を保とうとする努力。葛藤。(親の期待に全面的には応えない) TAT (主題統覚検査) :両親の期待に、不本意ながら応えると表現自分では「自分らしくありたい」と願いながら、実際には、仕事の奴隷に
抑圧/過剰な自己防衛/意図的に人付き合いを避ける傾向/感情を溜め込む/慢性的なうつ状態

キャリア構成:

安定したキャリアパターン自己表現を犠牲にして義務に自分を縛り付ける

キャリア構成プロセス

意思決定の連鎖の代わりに計画の連鎖
アイデンティティの早期完成 疑似結晶化 発達が固定化
親に対する快適さと安心感 = 早期完成型のハロー効果
( 59歳では)ハロー効果は薄れ「両親に理不尽に利用された」と強い怒り
自分のキャリアを「義務」と捉えてきた。( 59歳時には)「精神的に疲弊」したと怒り。早期完成型の「硬いタイプ」。
( 35歳のとき)自分のアイデンティティを問い直すために時間をかけた。「どうしたらいいのだろう」(早期完成型が止めていた自問自答を呼び起こした=リニューアル)。しかし結局は、新境地に挑むのではなく現状維持を選んだ。

キャリア構成コンテンツ

ロールモデル:トム・ソーヤー(冒険する自分。村を逃げ出したが良心の呵責から故郷に帰る。ウィリアムも同じ

趣味:人形劇/サンダーバード。
操り人形から操る側へ。宝石収集/宝石商(数十万ドルの価値)、音楽。ピアノ、トランペット、ドラム、ジャズバンド、執筆活動、記者。孤独な美的活動からビジネス活動へ発展→副業化

好きな物語:「ちびっこきかんしやだいじようぶ」自己信頼と最大限の努力によって達成したものは、社会的な承認を得て報われるという規範(ハリウッド映画によくあるパターン? )

興味:税理士。会計士。発明家。経営者。

テスト結果からみた適性と興味:揺れ動く価値観。「美意識」「創造性」「多様性」→「管理」「達成」矛盾したプロフィール自律的な自己表現活動と他律的な規則順守活動RIASECでは、ACE (CAE)葛藤の現れ創造的職業と親の職業の両方に惹かれ葛藤。宝石商で“統合”

教育:矛盾した興味を統合するような活動。説得の才能、交渉術。芸術領域の中で、慣習/企業的に振る舞う

職業:ACEを活かして、宝石商(A )、工場経営(C )、不動産取引( E)
ウィリアムが義務や閉ざされた選択肢に頂応した方法①親の職業選択を受け入れ、自分に合うように自分を形成(裁量を発揮できた? ) ②宝石商として、交渉人、自律と交渉社会的評価ACEを体現記者・執筆活動、ジャーナリズムへのこだわり。選べなかった道だったかもしれない
(結局) 59歳の時点でも早期形成されたアイデンティティは変わっていない。
「これからも(親から与えられた)工場を経営する。毎日自分のすべきことをする。それが本当に大事」

TKさん感想
◇これを、かわいそうな人生と見るか、頑張った人生と見るか?こういう、走り続けるタイプは、けっこういるはず。
◇父/母/弟/子供たちの自己概念との違いは?それは何に起因するのか? ( ex.気質の違い?それはどこから来るものか?仮に、それが分析できたとして、どうなるものなのか? )。
◇40年の調査の途中で適切な「介入」をしていれは、本人にとって、もう少し「マシ」な人生になったのではないか?
◇あるいは、調査やインタビュ-自体が、(暗黙の)カウンセリング/気づきにつながっていたということはないか?
◇尊重すべきは、本人自身が自分の人生の意味をどう意味付けているかであろう。彼は「救い」を求めているのか?
◇キャリコンとは “望まれる、おせっかい”(TKさん造語)であることを謙虚に受け止ながら、自己概念の成長・深化を支援していきたい。(ウィリアム自身の自己概念の成長・深化の方向性につていは、大いに議論したいところである)以上

TKさん、まとめありがとうございます。次は第7章で4人を俯瞰・分析したいと思います。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

目次