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自己から他者へ(1)

前に「旅の答えへ」のシリーズで、自己の過程を学びました。次は他者の認知(対人認知)を思いめぐらせたいと思います。「自己から他者へ」がテーマです。また放送大学のテキスト「社会・集団・家族心理学」を起点に参考にいたします。

私たちは、日々他者と関わりながら生活していきます。その中で相手をどのように認知しているかのメカニズムを知ることは大切な事かと思います。なるべくフラットのに接したいとは思いながらも、何らかのスキーマが働くときがあります。

中でも認知者の既有の知識は対人認知に大きな影響与えると言われています。最も大きな要因がステレオタイプです。

その前に人がモノとは異なるヒトに対する認知の差異から始めたいと思います。

対人認知の特徴

モノとヒト

我々はモノとヒトに対する認知はどこに重点を置いているでしょうか?

モノの認知:大きさ、形、色といった物理的・外面的特徴の把握に重点
ヒトの認知:物理的・外面的特徴に加えて、印象、感情、意図などの心理的・内面的特徴の把握に重点

かと思います。

この心理的・内面的特徴は、対象を認知する側(主体)の心の働きにより大きく左右されるため、認知する側によって印象が全く異なる場合があります。これは、認知する相手(客体)と対象を認知する側(主体)との知識、期待、欲求、感情、あるいは関係性が大きく異なるためです。

中心特性と周辺特性

ソロモン・アッシュ(Asch, 1946)は、印象形成の研究の中で「ある人物の特徴を示したもの」として下記の表を研究実験の参加者にそれぞれ示して、その人物の印象を尋ねました。

リストA知的な→器用な→勤勉な→温かい→決断力のある→実際的な→注意深い
リストB知的な→器用な→勤勉な→冷たい→決断力のある→実際的な→注意深い

すると、温かいと一言入ったリストAの特性を示された参加者は、冷たいと一言入った入ったリストBを示された参加者に比べ、他の特徴を表す言葉は同じなのに、この人物について遥かに良い印象を持ったことが報告されています。

そこから、ソロモン・アッシュ

温かい冷たい」という特性は、私たちが他者に抱く印象の中でも中心的な役割を果たすもの(中心特性という)であり、他の特性(周辺特性と言う)が含意する意味までも左右する。

と考えました。

対人認知への既有知識の働き

対人認知において、我々は外面的な情報による推測には限界があるため、既有の知識を最大限に利用して、見えない特徴を推測しようとします。

例えば、ある人が「正直な」人だと知ると、その人は恐らく「信頼できる」人だろうと、自然に推論します。

この原理を「暗黙の性格理論(Bruner and Tagiuri, 1954)」と呼びます。

さらに、ローゼンバーグら(Rosenberg, Nelson, and Vivekanathan, 1968)は、他者を認知する際に想定する性格特性は、「社会的望ましさ」と「知的望ましさ」を軸とする二次元の空間に布置できるもので、近く人ある特性ほど、その人物が保持しているものと推測されやすいとしています。

ゴロワーズ

ただ「あの人はあまり社交的ではないので、冷たい批判的なひとだろう」と思っていたら、話してみると違っていたみたいな思い込みを生むこともありますね。

ステレオタイプ

予め、ある人に対して持っている情報で、ひとはその人の性格のどの特徴を推論することを知りました。それが、集団に対してはどうでしょうか?その視点が、ステレオタイプです。

ステレオタイプとは

我々は、性別、人種、職種、年齢など、様々なカテゴリーで区別された集団やその成員に対する、抽象化された知識をステレオタイプと呼びます。これまでのあった経験が無くとも「アメリカ人とはどのような人たちか?」との問いに、例えば「白人で背が高く、陽気で楽天的」などの特徴を挙げたり、実際に会ってもステレオタイプを利用して、その人の心理的・内面的特徴を推測するでしょう。

偏見と差別

先のアメリカ人の例のように、全体としてみれば正しい知識だとしても、全てのアメリカ人と言う集団成員に適用できるわけではありません。このようにステレオタイプは、しばしば集団成員に対して抱く評価的、感情的反応を示し、これを「偏見」と言います。偏見は常に否定的ではありませんが、否定的な場合は、社会問題として顕在化しやすく、それが具体的な行動に及ぶとき、その行動を「差別」と言います。

ステレオタイプ内容モデル

先のソロモン・アッシュの印象形成の研究で示された、中心特性「温かい冷たい」という特性は、特定の集団成員に対するステレオタイプとしても利用されます。

概して自分を含まない集団(外集団)の成員に対しては、「冷たい」という特性が付与されやすいです。

ゴロワーズ

どこかの団体に所属すると別な団体に対して、否定的な印象を持つことあります。実際は、その成員と話せば自分たちの偏見だったことに気づく事があります。

しかし平等主義的な信念が浸透している現代社会では、特定の集団に否定的な特徴のみを付与することは許容されないことが多いため、「〇〇だからと言って、〇〇だと決めつけてはいけない」となってきました。

近年では、両面価値的ステレオタイプ、つまりある面では否定的だが別な側面では肯定的なステレオタイプが良く見られます。

例えば

冷たい」が「能力が高い」 ⇔ 「温かい」が「能力が低い

と言った相補的な付与です。

このように、ステレオタイプを人柄と能力の二次元で捉えるモデルがステレオタイプ内容モデル(Fiske, et al., 2002)です。

この両面価値型ステレオタイプの相補的モデルを人が当てはめる理由は、例えば、自分より社会的地位の高い人(富裕層、高級官僚など)には「冷たいが能力が高い」と捉えることで、能力は認めざるを得ないが、人柄は良くないと考えることで、心の安定を図ると考えられます。同様に付与される側も、人柄がよくないと思われることは不本意だが、能力が高いと認められることによって、否定的なステレオタイプが軽減されることになります。

この相補的ではないステレオタイプの付与は、極めて限定的だが人柄と能力で何れも肯定的に評価されるのは、自分と同じ内集団の成員で、特に社会の多数派を占める成員のみと見られます。一方、人柄と能力とも否定的に評価されるのは、少数派の薬物依存者やホームレスです。

このように人柄も良く、能力も高いとみられる内集団構成員には賞賛誇りの感情が発生しますが、外集団構成員からは、能力は高いが人柄は良くないとみなされれ、妬み偏見が生じます。また人柄は良いが能力は低いとみなされる人々に対しては同情憐れみに基づく偏見、能力も低くく人柄も良くないとみなされる人々に対しては嫌悪軽蔑に基づく偏見が生じます。

何か胸が痛くなる話になりましたが、このステレオタイプの働きはまだ続きます。

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