放送大学の神経・心理学の講義を聴いていたら「意識」に関して、「意識の座」と気になる言葉に引っ掛かり、少しまとめてみました。「’22 神経・生理心理学」を参照しています。
「意識の流れ」
先ずは、印象的なのがウィリアム・ジェームズ(William James) の「意識の流れ」です。
ジェームズに先立つ心理学の祖のヴントが心を要素の集合として捉えて、内観的に心を観察し、心の構造を捉えようとしたのにのが要素主義です。それに対してジェームズは異を唱え、要素を静的ではなく動的なものとして捉え、「意識は絶えず変化していながら同一の人格的意識を形成しており、そのなかでは意識もしくは思惟は連続したものと感取されている」と述べています。その「変化しつつ連続している状態」を「意識の流れ」と呼びました。
「クオリア」
意識は状態と内容の二つの視点で捉えることが出来ます。
意識の状態:状態に着目した覚醒水準、意識レベルとしての意識と言う区分です。例えば、朝起きて頭がさえている状態を高い水準とすると、眠くなって頭がボンヤリしている状態から、睡眠時や麻酔がかかった状態、事故による昏睡や植物状態など覚醒水準・意識レベルは低くなり、ついに死んでしまうと意識レベルはゼロ水準になります。
意識の内容:思考や感情、さらには感覚で構成される意識の内容に関するもので、思考や感情の中には言語化可能なものから、五感を通じた鮮烈な感覚のようなクオリアとよばれるものまで含まれるとも言われています。
この「クオリア(QUALIA)」はソニーが人の心に訴える“モノづくり”を目指して、脳が質感を感じる力を意味するブランド名として一時発信してました。その頃はデータ圧縮したMDもあり?でした。
「意識の座」
1950年代に始まった認知心理学では、心をある種の情報処理装置としてモデル化し、さらに 1980年代後半では脳機能イメージング技術の発展により意識の仕組みの研究が進みました。そこでは「意識を生み出す場所は何処のあるのか?」が議論されるようになりました。
その場所を「意識の座」と呼ぶそうです。なんだか惹かれるものがありました。
座に座るのは、左脳の言語野、海馬、視覚野、右頭頂葉、偏桃体、等。夫々の由縁があります。
言語野:左右の脳半球をつなぐ脳梁を切断する手術を受けた患者が、左脳で処理される右視野だけ入力のはずが、左視野の情報も補うように空間認識を生み出すことが知られます。そこから左脳の言語野が、我々が普段経験している意識を生みしていると考えられます。
海馬:海馬の切除手術を受けたH.M.さんは、事実や出来事に関する情報の記憶である宣言的記憶の形成は障害されましたが、普段意識にのぼらない非宣言的記憶は正常でした。海馬は入力された新たな情報を記銘と呼ばれる記憶痕跡として別な部位に保持させる記憶を生み出す役割を果たしている考えられています。
右頭頂葉:右脳半球の損傷によって、左側の空間が意識に上らなくなる半側空間無視があります。半側空間無視の患者は、顔の右半分だけに化粧を施したり、食事の時にテープルの右側にあるものだけを食べたりするそうです。この症例に鑑みると、右頭頂葉もまた意識の座の一つと考えられます。


「意識の中枢」
このように意識の座は脳に散在しているように思えますが、これらの意識を統一的に制御する「意識の最高中枢」は存在するのでしょうか?という疑問が次に生じます。現在では、前頭連合野が、ここに障害を受けた症例や様々な先行研究から、意識の最高中枢と考えられています。
その症例の一つがフィネアス・ゲージです。元来は理知的で仕事も極めて精力的かっ粘り強くこなす性格だったゲージは、大きな鉄の棒が頭蓋骨を突き破る爆発事故に巻き込まれ、前頭連合野を中心とした脳部位に大きな損傷を受けました。事故後、彼の身体的な健康状態は良好でしたが、知性と衝動とのバランスが破壊され、彼は無礼で時折ひどくばちあたりな行為に走るようになりました。このことから、前頭連合野が理性と衝動のバランスを取ることや、将来の計画に関わるという、極めて高度な意識の働きに関わることが示されました。
これらの前頭連合野の臨床例から、前頭連合野が意識、とりわけ、覚醒水準・意識レベルとしての意識よりも「クオリア」や「意識内容」としての「意識」に密接にかかわる重要な機能を担っていることが判りました。さらに、前頭連合野は脳の様々な部位と双方性の連絡をもち、散在する意識の座を統合する可能性があると考えられています。今や前頭連合野は、側頭連合野、頭頂連合野、運動前野、補足運動野、視床、視床下部、帯状回、海馬、扁桃体、大脳基底核、中脳網様体と連携する「実行機能」という概念で総称され、 研究が進められています。
ブレインマシン・インターフェイス
研究の未来として、意識と脳の関係について、これまで以上に研究が進展した暁には、脳の活動データをもとに、その人の意識状態、すなわち心の様子を可視化することが可能になる日がくるかもしれません。現時点で、それは困難ですが、意識の出入りを可能とするような、脳を外部機器に接続し、その機器を作動させるプレインマシンインターフェイスの研究も急速に発展しています。








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