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アート・オブ・ザ・ディール?

We need a strong deal, not a weak one like before.
「前みたいな弱腰のディールじゃなく、強い取引が必要なんだ。」(LifeHackより)

アメリカ大統領は、彼の手法を「アート・オブ・ザ・ディール(The Art of the Deal)」、つまり「交渉の美学」と呼ぶそうです。上の文は、このDealの使い方の例として、トランプ風に表現した文章です。今日、トランプ劇場と言われるように、明らかに彼の主導で国家間の交渉が進んでいます。

彼の方略は、心理学的には「説得」と呼ばれる行動になるかと思います。

説得とは、意図的なメッセージを用いて、他者の考え方や行動を変化させることです。

そして古典的な心理学的説得法のなかに、よく知られる3つの方略があります。

Door-in-the-face(譲歩的要請法)

 譲歩的要請法は、最初に受諾したがい大きな要請をして、先ず相手に拒絶させることで、それに比べ小さな要請を拒絶しにくくする方法です。何故か人は、大きな要請から小さな要請に変わったことに対して、譲歩してもらったと受け止め、こちらも譲歩しなければ相手に悪いと思わせる交渉術です。「譲歩の返報性」とも呼ばれ、先に紹介した「自己開示の返報性」と近いものがあります。他者から何らかの恩義、恩恵を受けたら、そのお返しをしなければならないという、 暗黙の社会規範でもあります。

Foot-in-the-door(段階的要請法)

 段階的要請法は、最初に受諾されやすい小さな要請をして、先ず相手の承諾を得てから、段階的に大きな要請も承諾させる方法です。何故か人は、一旦受諾すると次の要請が断りにくくなります。それは、人々の持つ自分の行動や信念を一貫させようとする心理的傾向(一貫性の原理)によるものと言われています。

Low-ball-technique(ローボールテクニック)

 ローボールテクニックは、相手が応諾するような好条件を提示し、相手の応諾を得た後に、何らかの理由をつけて、その条件を取り去ったり不利な条件を追加したりする技法、好条件が外された後でも、一度応諾していることで、その応諾を取り消しにくい。段階的要請法にも近いが、最初に提示した好条件を変更するため、倫理的な問題を含んでいる。

 トランプ米大統領が2025年4月に相互関税(トランプ関税)を世界各国に通告しました。各国との貿易収支、非関税障壁等の状況によって税率が決定され、各国に大きな衝撃を与えました。なお、米国は相互関税の上乗せ部分について、4月9日に90日間の停止を表明しました。その間に拒否した国もあるましが、各国がアンカーともいえる初期値をベースに交渉を始めました。

 トランプ大統領の取る方略は、最初の Door-in-the-face(譲歩的要請法)に相当すると思います。

 さらに別な視点もあります。人はヒューリスティックと呼ばれる、十分な情報を吟味して物事を合理的に判断するよりも、最初に直感的に推測した値を手掛かりに判断する方略を選ぶ性質があります。この直感的な判断の、最初の値をアンカー(係留点)と呼ばれ、譲歩的要請法の最初の大きな要請が、このアンカー(係留点)の役割を果たし、この値を基準にしてしまう認知バイアスを利用したものと言えます。

 北山忍とマーカスの文化的自己観の研究(1991)によると、他者と分離した独自の存在として自己を捉える相互独立的自己観を持つ欧米文化に対して、日本をはじめとする東アジア文化圏は、他者との人間観に埋め込まれた存在としての自己を捉える相互協調的自己観が優勢だそうです。

 つまり世界でも珍しいお返しの文化をもつ日本人の相互協調的自己観、つまり返報性の特性、からすると、このDoor-in-the-face(譲歩的要請法)には弱いかもしれません。

ゴロワーズ

私もどうやら日本人らしく、この方略は好きになれません、どちらかと言うと、トランプ風はアート・オブ・ザ・スティール(The Art of the Steal)が近い気がします。

 ところで、アート・オブ・ザ・スティール(The Art of the Steal)という言葉を検索したら、その題名のカナダ映画がありました。日本未公開ですがDVDはあるようで、何故かは邦題は「エージェント・スティール」です。やはり日本人には芸術と盗みがしっくりこないので手直ししたのでしょうか。
 話は、「弟のニッキーらと強盗団を率いるクランチはある時、ニッキーの裏切りに遭い刑務所送りとなった。数年後、出所してバイクのスタントマンをしていたクランチはある日、ニッキーと再会する。クランチは怒りを爆発させながらも、ニッキーやかつての仲間たちと再び強盗団を結成、世界で最も貴重な本を盗み出す計画に乗り出す。だが、2人はお互いに全く別の思惑を抱えており、それが原因で彼らの計画に狂いが生じ始める。」(Wikipedia)です。

映画よりも、トランプのディールの行方の方が気になりますね。

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