社会的推論
ここまでは、原因帰属の観点で、自己や他者の人と出来事の原因の推論を行ってきました。これを自分、他者、社会に関する推論に基づく判断とすると、社会的推論と言えます。やはり人間は入手可能な情報をすべて吟味したり、それを基にした合理的判断を必ず行うわけではなく。むしろ以下のような方略を好んで利用します。放送大学テキスト「社会・集団・家族心理学」を参照しています。
ヒューリスティック
直観的・直感的で解決への道のりが早く、確実に正答にたどりつける保証はないが、だいたいはうまく物事を解決することができる、認知的なコストが低い方略がヒューリスティック(Tversky & Kahneman, 1974)です。
代表ヒューリスティック
代表ヒューリスティックは、社会的推論
ここまでは、原因帰属の観点で、自己や他者の人と出来事の原因の推論を行ってきました。これを自分、他者、社会に関する推論に基づく判断とすると、社会的推論と言えます。やはり人間は入手可能な情報をすべて吟味したり、それを基にした合理的判断を必ず行うわけではなく。むしろ以下のような方略を好んで利用します。
例えば、
硬貨を6回振ったとき、起こりやすい順に並び替えてください
A:表ー裏ー表ー裏ー裏ー表
B:表ー表ー表ー裏ー裏ー裏
とすると、
実際には何れも同じ確率ですが、A→Bと答えがちです。
Aの方がランダム性の典型的な姿に類似しているため、より起こりやすいパターンと認識されるからです。
利用可能性ヒューリスティック
利用可能性ヒューリスティックはどれだけ事例を思い浮かべる事が出来るかを基準として、その事柄の生起頻度を推定するする認知方略です。
例えば、
rで始まる英単語と、3番目の文字がrの英単語はどちらが多いか?
に対して、多くの場合は前者と答える。
実際に数が多いのは、3番目の文字がrの英単語です。
それは、
rで始まる英単語の方が思い浮かべやすく、実例を挙げやすいのに比べ、3番目の文字がrの英単語の実例を挙げるのが難しいからです。
これは、帰属エラーや行為者―観察者バイアス同様に、目立ちやすい要因が原因として想起しやすいため帰属すると考えられます。
係留と調整
判断する前に、前もって与えられた値や、最初に直感的に推定した値を手掛かりにして、先ず判断し、その後、最終的な判断を下すために調整する認知方略を係留と調整と呼びます。
例えば、
国連に加盟しているアフリカの国の数を1から100までのメモリの付いた目盛りを見て答えるときに、
当初の目盛りの位置が10の場合は、解答の平均が25か国になり
当初の目盛りの位置が65の場合は、解答の平均が45か国になりました。
それは、
前者の条件では初期値が小さいため最終的に答えた解答もそれに引きずられ小さいのに対して、初期値が大きい場合は最終的に答えた解答は大きい方に引きずられたと考えられます。
このように最初に設定した値が、何の根拠もない数字であっても係留点(アンカー)の役割を果たし、その後の調整が不十分だと、最終判断が根拠のない数字に引きずられるといった系統的なエラーやバイアスを生むことがあります。
錯誤相関
利用可能ヒューリスティックは、ステレオタイプが誤った関連付けに関与する可能性が指摘されています。それを錯誤相関と呼びます。
錯誤相関とは実際には関係性が全くないにも関わらず、二者間の関係を過大に見積もる事です。(Chapman and Chapman, 1969)
例えば、
架空の集団Aと集団Bの成員の行動がひとつずつ、実験参加者に呈示されます。
集団Aの成員数は26人で、このうち18人は望ましい行動、8人は望ましくない行動を取ります。
集団Bの成員数は13人で、このうち9人は望ましい行動、4人は望ましくない行動を取ります。
つまり集団成員の数が異なりますが、望ましい行動と望ましくない行動は同じ比率です。
しかし実験参加者による各集団の印象は集団Aの方が良いものでした。また各行動の頻度を推定させると、集団Aに比べて集団Bの方が望ましくない行動が過大視されました。
それは、
少数派集団と望ましくない行動は生起頻度が相対的に低いため、目立ちやすく、そのため目立ちやすい行動と組み合わさり、さらに注目を引くものとなったために、集団Bは望ましくない行動をする成員が多いとの誤った関連付けが生じたと考えられる。
これは、
最近よく聞く、日本に住む外国人に否定的なステレオタイプが付与されると、外国人の犯罪が実際より多いという錯誤相関が生まれ、偏見に繋がるメカニズムを表していいるかもしれません。
以上で、個人から他者、そして社会的判断に至るまでの因果推定における認知のメカニズムを大分知ることが出来ました。合点行くものもあれば、何となくそうも言えるものまでありましたが、考える上での起点には十分なる理論ばかりでした。ここまでお付き合いいただきありがとうございました。


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