- 人生すごろく「金の糸」とは?
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JCDAが自己探索ツールとして開発したのが、人生すごろく「金の糸」~golden thread~です。就職活動において学生が相談したいことNO1は、「自分のことがわからない」というものでした。「金の糸」は、このような学生が取り組みやすいよう、ゲーム形式で楽しく自己理解を支援します。
京都産業大学の実践的課題解決型教育(Project Based Learning)の授業において、JCDAが提示した課題「学生の視点を活かす、キャリアカウンセリング体験プログラム開発」に取り組んだ学生たちが、本商品の原案となる自己探索ツールを考案しました。
人生すごろく「金の糸」~golden thread~ | 日本キャリア開発協会(JCDA) (j-cda.jp)
- 「金の糸」~golden thread~の由来
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この「金の糸」の由来はギリシャ神話「英雄テセウスのミノタウロス退治」からきています。
クレタ島のミノス王は妻が生んだ頭が牛で体の怪物ミノタウロスを迷宮に閉じ込め、その生贄として少年少女を7人づつささげていました。アテナイのテセウスはこの悪習を止めさせるため、自ら生贄に志願してミノタウロスを退治しようとしました。王女アリアドネが美青年テセウスに一目ぼれし、テセウスが戻って来れる様に迷宮に入る時に、糸玉を渡してやります。この糸を垂らしながら迷宮に入り、無事に帰ることができた。これがアリアドネの糸あるいは「金の糸」~golden thread~です。
https://fineartamerica.com/featured/theseus-and-the-minotaur-in-the-labyrinth-edward-burne-jones.html https://monspedia.com/minotaur/
キャリア理論の視点で金の糸を見ると-
マーク・L・サビカスのキャリア構築理論*の視点で見ると、ナラティブアプローチにおけるマイクロナラティブ(小さなストーリー)を貫くマクロナラティブ(大きなストーリー)を示すライン(キャリアテーマ)が人生の迷宮から未来への明るい出口に導く金の糸に当てはまります。
ナラティブカウンセリングの過程をすごろくゲームに当てはめて考えてみると
STEPマイクロナラティブすごろくのコマを進めながら人生の一見バラバラに見える過去の様々な経験(小さなストーリー)を振り返ります
STEP振り返りから振り返ったことを自らの言葉で語り、周りの仲間からのフィードバックを受けると、その出来事を少し離れた視点で見ることが出来、そこに見える特徴つまり自分らしさに気づきます
STEPマクロナラティブさらにこの幾つもの小さなストーリーのからの気づきには何か共通するものがあり、それを貫く自分だけの人生のライン、つまり大きなストーリー「キャリアテーマ」がある事にも気づきます
STEP金の糸このラインこそ、テセウスが暗闇の迷宮から戻るときに頼りにした「金の糸」に当てはまる気がしませんか?
STEP次のステップ自分だけの「キャリアテーマ」が見えてくると、未来の次のステップを照らす輝ける「金の糸」も見えてくるかもしれません
*キャリア構築理論はサヴィカスが唱えた理論であり、パーソンズからホランドに至るマッチング理論(特性因子理論)、スーパーのキャリア発達理論などを統合・発展・展開した 21 世紀のキャリア理論と位置づけられる。
労働政策研究・研修機構(JILPT)https://www.jil.go.jp/publication/ippan/images/shinjidai…この辺りのサビカス先生のキャリア構築理論にご興味ある方は原著輪読会があります。
- 「ずっと金の糸」の目指すこところ
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金の糸のきっかけは就職活動において学生が相談したいことの「自分のことがわからない」に対して、ゲームを通してナラティブアプローチでいうところのキャリアテーマすなわち自分らしさ(自分のこと)を知るのが目標だったそうです。オンラインキャリアらぼでは、自らの人生を語り、それに対して周りのメンバーからの多様な視点のフィードバックを受け、今まで知らなかった自分に気づくことが出来れば、これからのキャリアコンサルタントとしての自分のありたい姿を知ることにつながると考えました。
そこで更新講習やピアトレのような時間やメンバーなどの制限を外して、
- 同じメンバーで小学校から卒業まで一緒に過ごす → より暖かい信頼関係の中で振り返る
- 大学以前に卒業する方も同じ年頃のときの経験を一緒に振り返る → プロトタイプより誰も取り残さない
- 開催日程はメンバー全員が揃う日を予定表アプリでゆっくり探す → 最後まで一緒のメンバーを実現
- 仕事、育児や介護など時間の取れない方に合わせ短い時間でも開催 → 人生の振り返りは焦らず
- 「ずっと金の糸」を始めた経緯について少し
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- キャリアコンサルタントとしてのスタート点となる養成講座で出来る繋がりは今後の人生において大切な資産となると考えています。私が運営スタッフで参加したオンラインクラスは地域や所属の異なる一生会えないような繋がりが生まれていました。それが卒業後に徐々に切れていくのが勿体ないと感じておりました。グループワークを通じて普段話せない経験を共有した者同志の繋がりを深めるきっかけとなるツールとして「金の糸」はふさわしいと思いました。
- オンラインであること
- 金の糸は一つのすごろくシートを囲んで、お互いの表情や息遣いを感じながら出来るところが魅力です。それをオンラインでも実現し、しかもリアルと同じような体験ができることを目標としました

- オンライン「ずっと金の糸」の実施方法
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- 運営の工夫
- Zoom開催者がすごろくシートを用意し、画面共有のオプション機能「第 2 カメラのコンテンツ」を利用して、コマを置いたシートを全員で共有します。これにより実際の一枚のすごろくシートを囲んでリアルに集まったような一体感が持てるようにしています。
- ゲーム中は可能な範囲で、ギャラリービューでうなずきなどのお互いの表情が見えるように、また全員ミュートオフで励ましの言葉が何時でも掛けられえるようにしてもらっています。
- 休憩や振り返りシート記入時はビデオオフ・ミュートして、気分転換や書き込みに集中頂けるようにしました。この切り替え可能な所がオンラインのメリットかと思います。小さいですがサイコロは各自に用意して振ってもらい、自らコマを進めているよう感じて頂いてます。またゲーム途中で終わったときは、再開できるようコマの位置のスクリーンショットを撮ってます。
- 運営の工夫
- 実施の様子と今後の展開
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- 事前に用意したそれぞれの世代のエピソードばかりでなく、偶然のすごろくの目で決まる問いにより、思いがけずに忘れていた記憶が蘇ったり、他の人の思い出の話を順番に聞くうちに自分自身のエピソードを連想する様子が見受けられました。例えば好きな食べ物でお一人給食の話を取り上げると、他のメンバーも次々に給食にまつわる出来事が思い出され、共通の話題と時代や地域により差を知ったりとても盛り上がりました。この辺りは対面のカウンセリングの自分の語りやカウンセラーの伝え返しによる気づきには無い、さらにアクティブなグループカウンセリングの場の醍醐味ではと思いました。
- このワークショップを始めた2023年はキャリアコンサルタント養成講座オンラインクラスの繋がりで3グループ(各4人)で計9回開催しました。最初のグループは既に5回目を終えて大学時代まで来ました。参加された方からの声掛けによる新グループ開催の予定や参加をきっかけにご自身で学校で実施の試みなどの想像以上の広がりが始まりました。また参加された方からのアンケートから様々な課題も頂き、今後の開催の参考にいただくとともに、開催者としても成長する必要を感じました。

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